「みやの」を知ったのは本当に偶然の出来事だった。下北半島へ雲丹取材に出掛ける際に、どこに宿泊してむつナイトをエンジョイするかで編集と盛り上がっていた時だった。むつ市内のビジネスホテルに泊まり、Wi-Fiを切望としている取材陣と、なぜか夜の灯りが何もなさそうな佐井村を勧めてくるアテンドをお願いした青森県庁職員。……これは何かある。

この麗しき朝食よ、永久に……

地元民も女将に胃袋を掴まれる

我々取材スタッフは県庁職員を根掘り葉掘り問いただした。

青森県庁職員「あのう、実は……女将の作るご飯がすごくおいしくおいしくて」

切り出した県庁職員の口から出た魅力的ワードの数々に慄いた。

筆者「そういうところこそ、取材しないとダメなんだよ。なんで言わなかったの! 」
青森県庁職員「でもWi-Fiが……」
筆者「いや、いい。そういうことならいらない。全然いらない。美人女将のおいしい郷土料理が食べられるその宿を満喫するわ! 」

というのがみやの行き決定までのくだりである。

みやのの外観

アクセスしにくくてもWi-Fiは届く

みやのへは、JR大湊線「下北駅」から車で1時間30分、または、バスで3時間。青森市から行くなら、高速船(シィライン)で2時間20分、または、車で3時間30分となる。交通手段が限られるため、佐井村までたどり着くにはレンタカーは必要不可欠だ。道中の景色かがいいので、そんな時間がかかった感じがしなかった。ますますもって期待度は高まる。

車が到着すると、宿から「遠くまでお疲れさまでしたね~。いらっしゃい」と、美しい笑顔を浮かべた美人女将の宮野蘭子さんが出てきた。

噂の美人女将の宮野蘭子さん。毎朝近所の花を手折って、旅館に飾っている

「今日はよろしくお願いします! 食事楽しみにしてきました」と言えば、「何もないところですが、ゆっくりおくつろぎくださいませ。さ、中へどうぞ! 」と返ってきた。取材機材を抱え、早速部屋へ。

六畳一間の個室。14インチのTVと45cmぐらいの小さなテーブルがひとつ、座布団がひとつあるシンプルなつくりだ。そしてここで衝撃の事実が! ここにたどり着くまでの道中、携帯の電波が微弱になり、残してきた仕事に不安を覚えながらの足取りだった。それがなんと、宿にはFREE Wi-Fiが入っているではないか。でかした、女将さん!

シンプルな六畳一間。これはこれで落ち着く

浴槽は木製ではないものの、壁と天井、風呂蓋に貼られた天然の青森ヒバからいい香りがし、とっても癒やされる。お風呂、トイレ、洗面所は共同。お風呂に男女の区分けがないので、基本的にはひとりで入って、入っている間は鍵をかけるシステムだ。大人ふたりが並んで足を伸ばせる広さはあるので、カップルや家族、友だち同士であれば一緒に入浴もできそうだ。

浴槽も広くはないが、天然の青森ヒバの香りに癒やされる

シャンプーリンスやボディソープ、タオルなどは備えられているが、歯ブラシはないので気をつけたい。ただし、忘れた人のために、歯ブラシも実はこっそり、準備をしているとのこと。浴衣やシーツ以外は、いずれにしても誰かの家に泊まりにきた感じの、普通の柄物タオル。潔癖性の人は自分のタオルを持参するようにしよう。民宿とは読んで字のごとく。ホテル的設備を求めることのないようにしていただきたい。

夕食だ! 心してかかれ!!

先に宿料の説明をしておくと、宿泊料金:1泊2食6,000円/8,000円(料理内容の充実度によって違う)、素泊まり4,000円。はっきり言って、ここで料理を食べないのはあまりにもったいない。先に言ってしまうと、このコース都内で食べたら食事だけで1万円はくだらない内容だからだ。迷わず大間のマグロが食べられる8,000円のコースでお願いした。

これを食べずに帰る、という選択はここではない。絶対にない

どうだ、これが一人前。1泊2食8,000円という驚きのバリュー! もう、「新日本三大民宿」に認定したい勢いである。

○ヒラメのカルパッチョ

ヒラメのカルパッチョ

○焼きホタテ
○ホヤのお刺身
○黒ムツの塩焼き

黒ムツの塩焼き

○ナスの揚げ浸し
○鰊の粕漬け
○サザエのつぼ焼きと焼きイカ
○みやの名物「トマトのお浸し」

みやの名物「トマトのお浸し」

○マグロの煮付け
○生ウニ

生ウニ! 生ウニ! 盛りだくさんっ。これで一人前というだから、本当にびっくりである

○大間のマグロの赤身、中トロ、大トロ、鯛、カンパチの盛り合わせ

大間のマグロの赤身、中トロ、大トロ、鯛、カンパチの盛り合わせ。これだけで都内でいくらすると思っているんですか!

○青森もずく
○姫筍とミズの和え物
○布海苔のお味噌汁とご飯

このラインナップでこの日は終了。もちろんのこと、全部はさすがに食べきれず、この日は布団に倒れこんだ。翌朝は容赦なくやってくる。昨日の海鮮が消化されるのを待たぬまま朝食会場へ。

朝食だ! 心してかかれ!!

翌朝の朝食風景。これ、すでに夕食レベルだと思うんだけど……。一同深く思った。

朝食も死角なし

○鮭の塩焼き

鮭の塩焼き、日本の正統派朝ごはんの代表格

○たらこ
○蒸しウニ

蒸しウニ。朝からウニ。いいんですか、お母さん? こんなぜいたくして……

○山の幸ワラビのお浸し
○ところてん
○納豆と生卵、お漬物
○あらめ(海藻)のお味噌汁

こんな日本一の朝食を前にして、箸を止められる者はいないだろう。実は筆者たちはこれから午前中に3杯のウニ丼の取材が入っていたにも関わらず、すでにウニ&鮭&たらこ丼にして2杯食べてしまっていた。完敗だ。「パンがないならウニを食べればいい」「マグロは飲み物」みたいな海鮮に溺れる生活をしてしまった。もう帰りたくない。

「おいし過ぎですよ、女将。もう帰りたくないです」と言えば、「うふふ、ありがとうございます。ここには何にもないでしょ~。2食のご飯がうちの武器だから(笑)」と、笑っておっしゃった。武器……ニュークリアボム(核兵器)レベルでしたよ、女将。必ずまた来ます。

●information
「民宿 みやの」
住所: 下北郡佐井村佐井糠森33-4
部屋数: 和室8部屋
収容人数: 25人
お風呂: 麦飯石人工温泉(男女共用)
駐車場: 普通車5~6台
ネット: FREESPOT(無線LAN)
宿泊料金: 一泊二食6,000円/8,000円(料理内容による)、素泊まり4,000円

※記事中の料理は2017年6月に提供されたもの。価格は税込