ヴイエムウェアは、企業が「時」「場所」「デバイス」を問わず従業員にアプリケーションを提供する仕組みとして「デジタル ワークスペース」を提唱している。最近は、セキュリティの強化と働き方改革を両立するソリューションとして、「デジタル ワークスペース」を打ち出している。

米VMware エンドユーザーコンピューティング部門上級副社長 兼 ゼネラルマネージャーのスミット・ダーワン氏は、「日本は海外と比べて、ワークスタイルの変革が遅れている。しかしその分、海外の事例からさまざまなノウハウを学ぶことができる」と語る。

米VMware エンドユーザーコンピューティング部門上級副社長 兼 ゼネラルマネージャー スミット・ダーワン氏

デジタル ワークスペースの導入メリットとは?

ダーワン氏が、エンドユーザーにまつわる課題として、真っ先に挙げたのが「シャドーIT」だ。シャドーITとは、企業の承認を受けずに、無断で私物のデバイスや外部のサービスを利用することを指す。「IT部門が、ユーザーにとって必要な環境を作らないから、従業員は勝手にアプリストアからアプリケーションをダウンロードしてしまうが、この状況は企業にとって非常に危険」(同氏)。

シャドーITが行われると、従業員が勝手にITリソースを利用することにより、コストが増えるという問題が起こる。また、複数の方法によって情報にアクセスすることになり、従業員のエクスピリエンスが低下することになる。

ダーワン氏はこうした問題の解決策として、デバイスとアプリケーションの選択の自由を実現するプラットフォームの導入を挙げる。「今、IT部門が利用しているのは古いモデルのITであり、これではユーザーのニーズにこたえることができない」という。

同社がこうした課題を解決するソリューションとして、提供するのがWorkspace ONEをプラットフォームとしたデジタル ワークスペースだ。

Workspace ONEは、セキュリティが確保された状態で、コンシューマー向けアプリケーションの柔軟性、シンプルなエクスピリエンスを提供する。「従業員はデジタル ワークスペースにより、あらゆるデバイスから古いアプリケーションと最新のアプリケーションを同じ手順で利用できるようになる」とダーワン氏。

Workspace ONEを利用すれば、従業員は私物のデバイスから設定されたアクセス権に基づき、許可されたアプリケーションを利用することができる。そのため、セキュリティを確保した形で、BYODを推進できる。

IT部門はデジタル ワークスペースの利用により、アプリケーションのアップデートや修正パッチも一元管理が可能になり、これこそ「プラットフォームの力」だという。

どうすれば日本企業は働き方改革を推進できるか?

ダーワン氏は、ITを活用した働き方改革を進めるにあたって、「戦略を立てること」「プラットフォームをどう使うか」がカギになると話す。

「企業はつい目の前の問題解決に走って、ピンポイントでテクノロジーを導入してしまう。しかし、成功している企業は、テクノロジーを刷新している。これをよい機会として、戦略の策定から始めてはどうか」

Workspace ONEはクラウドからアプリケーションを配信できるような設計になっているため、ユーザーは特別なスキルは不要だという。アプリケーションの配信と更新は自動化できるため、コンプライアンスの強化にも有用だ。

また、ダーワン氏はWorkspace ONEのアドバンテージとして可視性を強調する。周知のとおり、企業では従業員が利用するデバイスの種類が増える一方だが、その利用状況を把握することは非常に難しい。そこで、同社は、Workspace ONEにおいてアナリティクスの強化に力を入れている。

今年5月には、アプリケーションのパフォーマンス・ソフトウェアを手がける新興企業であるApteligentの買収を発表している。Apteligentの技術を活用して、アプリケーションの利用状況の分析を可能にしていくという。「ビジネスのイノベーションをトラッキングできるようになる」とダーワン氏。

ダーワン氏に、日本の企業に対するアドバイスを聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

「アドバイスは3つある。1つ目は、シャドーITはよくないものであることを認識して、対策すべきであること。2つ目は、カスタマーサービスにイノベーションを起こそうとしているのであれば、プラットフォームを検討したほうがよい。システムをサイロ化させるのではなく、モビリティを活用すべき。3つ目は、プラットフォームを活用して、柔軟な働き方を実現してほしい」

オーストラリア・ニュージーランド銀行、米スプリントなどは、Workspace ONEの導入により、カスタマー・エクスピリエンスの向上を実現しているという。

「われわれは初めに、仮想化ソリューションによってITに柔軟性を与えた。そして今、デジタル ワークスペースによって、すべての働く人に柔軟性を与えようとしている。われわれは、人生のすべてに柔軟性を与えていく」と語るダーワン氏。

セキュリティの強化と柔軟な働き方の両立を実現――ヴイエムウェアのメッセージは、セキュリティを重視する日本企業のニーズに応えうるものではないだろうか。