既報のとおり「iPod nano」と「iPod shuffle」は販売を終了、Appleのポータブル音楽プレーヤーは「iPod touch」に一本化された。役目を終えたふたつの銘機に思いを馳せる本企画、前編ではiPodが音楽プレーヤー市場に与えた影響について振り返ってきたが、後編ではiPod nanoとiPod shuffleの功績や、音楽プレーヤーの行く末について考えていきたい。

前編はこちら: さよならiPod nano、iPod shuffle【前編】- iPodが音楽プレーヤーに与えた影響とは

iPod nano

iPod nanoとiPod shuffleの第1世代は、ともに2005年に発売された。iPod classicが120GB、160GBと大容量化を進めていったのに対し、初代のiPod nanoは最大4GBのフラッシュメモリをストレージとして採用。容量は少なめながら、お気に入りの楽曲をコンパクトかつスタイリッシュに持ち歩ける音楽プレーヤーとして、女性iPodユーザーの拡大にも大いに貢献した。第3世代からは動画再生に対応。カメラ内蔵モデルも(結局は第5世代で一時的に対応しただけになったが)発売された。

iPod nanoにマルチタッチ液晶が付いたのはひときわコンパクトな第6世代から。そして最終モデルとなった第7世代ではBluetooth接続ができるようになったが、結局Wi-Fi接続は対応せず、オフライン仕様にとどまった格好だ。

iPod shuffle

対するiPod shuffleだが、筆者も「ディスプレイを持たないiPod」が登場したときのインパクトはそれなりに大きかったと記憶している。シャッフル再生そのものは珍しくなかったが、基本操作をそれに振り切ったところに、Appleらしい潔さと先進性を感じたものだ。もっとも、筆者は自分の好きな曲を聴きたいときに聴けないとストレスを感じる方だったので、当時iPod shuffleを買いたいと思わなかったのだが。

しかしよく考えると、自身で作ったプレイリストを転送し、シャッフル再生で聴くスタイルは、現在Apple Musicなどの音楽配信サービスによって普及が進むプレイリスト再生と重なる。

例えば、ジムでトレーニングする時に、集中力が高まりそうな曲を集めたプレイリストを聴く人もいるだろう。心地よく汗を流しているときに「えっと、次の曲は……」と迷いながら画面をタッチする手間はなるべく省きたい。シャッフル再生の気持ちよさをいち早く提案していたプレーヤーがiPod shuffleだったと気づくのに、恥ずかしながら筆者は少し時間をかけすぎてしまったようだ。iPod shuffleの利便性に多くの人々が魅了されてきたからこそ、誕生から約12年のベストセラーになったのだろう。