一方、これまでこだわってきた“九州・沖縄への脚”としての役割も継続していく。その最たる例が「空恋」というプロジェクトだ。これは、同社の機体に九州・沖縄の各自治体の地名を表示し、その地のPRに役立ててもらおうというもの。1年間機体に地名を表示するとともに、機内では各自治体のアイデアでPRするという。現在は、この施策から派生したカタチで、「がんばろう! 九州」というプロジェクトに取り組んでいる。これは、地震により大きな被害を受けた、熊本県や大分県を支援するのが目的だ。

そのほか、機内サービスも徹底的に九州にこだわっている。機内販売商品をみてみると、長崎産アゴ(トビウオ)と大分産ゆずを使用した「ソラシドソラスープ」や、ちゃんぽん風味のスープはるさめ「ソラシドはるさめ」、熊本県キャラクター「くまモン」をデザインした「ドーナツ棒」など、九州で塗り固められている。

機内誌「ソラタネ7月号」を拝読させていただいたが、こちらも九州・沖縄一色。ちなみに特集は「夏の島でアクティブに遊ぶ」というもので、鹿児島県・薩摩川内の魅力を伝えている。

増え続けるインバンド需要を取り込めるか

会場に置かれていたダイキャストモデル。ソラシドエアが保有する12機は、すべて新造機「ボーイング737-800」だ

さて、国際線に意欲を示していると先述したが、そのねらいのひとつはインバウンド観光客の九州への直接の送客だろう。北海道は日本の観光地ブランドとしてグローバルでの知名度が高い。それに比べると九州の知名度は一段下がり、インバウンドの注目度はまだまだだ。だが、これはチャンスでもある。

2016年に2403万9000人に達したインバウンド観光客は、今後も増える見とおしで、しかも日本への再訪率は高い傾向にある。つまり、東京や大阪、京都といった定番の都市を目指したインバウンド観光客は、知名度がそれほど高くない地方へと視線を移し始めている。その意味で、これまで注目度があまり高くなかった九州に目が向けられる可能性は十分にある。

また、FIT(外国個人旅行者)が増え始めているのもポイント。国際線で九州に直接インバウンドを取り込む以外にも、羽田に到着した観光客が個人で航空機を予約し、九州を目指すということも十分に考えられる。こうした需要が増えた際に、ソラシドエアがどれだけ存在感を示せるかがカギになるだろう。

最後に、高橋社長に「大手航空、中堅の新興航空、LCC、どこを意識しているのか」と聞いてみたところ、「すべて」という答えが返ってきた。一時期は苦戦を強いられたソラシドエアだが、15周年を迎えた自信の表れがこの答えにつながったのかもしれない。