既報の通り、インターステラテクノロジズ(IST)は7月29日、同日実施する予定だった観測ロケット「MOMO」初号機の打ち上げを、翌日へと延期した。同日、ISTは大樹町内で記者会見を開催。出席した稲川貴大社長は、「打ち上げには大勢の皆さんが集まってくれた。延期は心苦しいが、実験を最優先した」と述べ、理解を求めた。

ISTの稲川貴大代表取締役社長。延期会見にはなったが、表情は明るかった

パブリックビューイング会場。打ち上げ5時間前でも、すでに待っている人が

速報記事でお伝えしたように、延期の理由は天候だ。10時30分に第4回GO/NOGO判断が行われ、GO判断が出たばかりであったが、その後11時ころ、ロケットを整備棟から射場へ出す段階で霧が濃くなり、水滴も感じるほどだったとのことで、このタイミングで延期を決めたという。

MOMO初号機の打ち上げ条件には、「視程600m以上であること」という規定があり、今回問題になったのはこれだ。この600mというのは、打ち上げ指令所から射点までの距離である。ロケットが指令所から見える状態でないと、正常に上昇したかどうか確認できず、安全上問題がある。これはそのための制約だ。

もし一旦、燃料や酸化剤の注入まで進んでしまえば、そこからの出戻りには大きな時間がかかる。その段階で延期になれば、翌日早朝のウィンドウに影響が出る恐れもあった。「判断は難しかったが、安全側を取った」(稲川社長)というわけだ。

MOMO初号機の打ち上げウィンドウは以下の5つだったが、1~2番目が見送りとなった結果、現在のターゲットは3番目の30日5:00~8:00となる。ただし5番目のウィンドウは、監視船が出せなくなり、実施しないことになったとのこと。3番目と4番目のウィンドウに実施できなければ、今回の打ち上げはない。

  1. 7月29日10:20~12:30
  2. 7月29日15:45~17:00
  3. 7月30日 5:00~ 8:00
  4. 7月30日10:20~12:30
  5. 7月30日15:45~17:00

なお最初のウィンドウの延期の原因となった"技術的な課題"について、稲川社長は「メジャーではなくマイナーなトラブル」だと説明。27日にリハーサルを実施した結果、手順の入れ替えや追加が必要になったのだとか。ただしこの課題については、すでに解決しており、問題は無い。

稲川社長は、「機体の完成度はかなり上がっており、技術的な面では楽観視している」とコメント。「あとは気象条件さえ整えば、うまくいくのでは」と自信を見せた。

気になるのは明日の天候であるが、とりあえず雨の心配は無さそう。予報では風も弱いとのことで、「条件は悪くない」(同)と見られる。ただ、射場周辺は同日の夕方になってもまだ霧が濃い状態。もともと早朝は霧が出やすく、視程の条件についてはやや気がかりなところだ。

射場にほど近い晩成温泉の様子(18時半に撮影)。いまだに霧が……

30日のウィンドウでも、本日と同様に、以下の決まった時間にGO/NOGO判断が行われ、作業を続行するかどうか決定される。結果については同社WEBサイトに掲載されるので、チェックするといいだろう。

  • 第3回 GO/NOGO判断(打ち上げ10時間前) 作業開始時判断
  • 第4回 GO/NOGO判断(打ち上げ6時間前) ランチャー移動、監視船出航前
  • 第5回 GO/NOGO判断(打ち上げ3時間前) 燃料(エタノール)充填前
  • 第6回 GO/NOGO判断(打ち上げ1.5時間前) 酸化剤(液体酸素)充填前
  • 第7回 GO/NOGO判断(打ち上げ直前) 推進剤充填完了、シーケンス開始前