大人になった今では、毎日なんなく乗りこなしている自転車。だが、幼い頃は何度も何度も転びながら、怒られながら、めげながら……練習した記憶がある。同じ思いをわが子にさせるのかと思うと、なんだか気が引けてしまう。そんなとき、東京・神宮外苑に約50年も続く老舗「自転車乗り方教室」があると聞き、さっそく取材に行ってきた。

神宮外苑 自転車の乗り方教室

あっという間に定員が埋まる人気ぶり

日曜と祝日は神宮外苑の外周道路がサイクリングコースとして開放されており、「自転車乗り方教室」はその一角で実施される。実施時間は午前の部が9時30分~12時、午後の部が13時~15時30分となっており、それぞれの部の受付が8時30分から行われているので、受講者(子ども)と一緒に現地で受付を済ませる必要がある(自転車教室の定員は、午前と午後の部それぞれ各30名※自転車14インチ、25名※自転車16インチ以上)。

自転車のサイズもバリエーション豊富に揃う

取材当日は、気温30度を超えるカンカン照りの猛暑だったにも関わらず、参加者はほぼ定員人数だった。春などの過ごしやすい陽気の季節は、あっという間に定員が埋まってしまうので、参加の際は注意したい。

指導員の方々は、皆さん50~60代以上のベテランばかり。同教室は来年で50周年を迎えるのだが、なんと開設時から子どもたちを教えているという熟練の方も! 受付後は、最初に自転車の乗り方について口頭でレクチャーを受けてから指導がスタートする。

乗り方教室スタート

コーンで仕切られた特設コースにスタンバイしたら、まず指導員自ら子ども用自転車にまたがり、実際の乗り方をレクチャー。話を伺ったところ、実際に目の前で乗ってみせることで子どもたちの理解が深まるのだという。

最初はペダルを外した自転車にまたがり、地面を蹴りながらコースを進んでいく練習。ここでバランス感覚、ハンドル操作、ブレーキの使い方を覚える。

子どもの自転車教室というと、みんな転びまくるのでは……と思っていたのだが、参加者の子どもたちはほとんど転ばない。乗り始めはおぼつかなかったが、小一時間程度でスムーズに蹴り進むことができるようになっていた。

ペダル付きの練習スタート

蹴った勢いで足をつかずにカーブを曲がることができ、ブレーキもちゃんと操作できるようになった子は、次の段階へ進む。いよいよペダルの装着である。

最初だけスタンドを下した状態でペダルを漕ぐ動作に慣れたら、すぐに走行スタート。多くの子が漕ぎ始めにバランスを崩すので、指導員が背中を押しながら数メートルだけ伴走し、あとは手を放す。緊張の瞬間だ。

意外にも転ぶ子は少ない

さすがに転ぶだろう……と思っていたが、ここでも参加者の子どもたちがほとんど転ばないことには驚いた。多少ふらつきながらも、多くの子どもたちがちゃんと自転車に乗れているのだ。

こうして無事に自転車に乗れるようになった参加者には、記念の「自転車教室修了証」が渡され、はれて卒業となる。

乗れるようになったらもらえる「自転車教室修了証」

この一連の流れに要した時間は、たった2時間半! ひょいひょいと自転車に乗れる子どもたちを見ていると、かつて長期間にわたって過酷な練習をしていた自分の幼少期は何だったんだろうと思いたくなる。

なんと30%の参加者が1日で乗れるようになる!

1回の教室で、約30%の参加者が自転車に乗れるようになる。ちなみに1回で乗れなくても、次回の教室でほとんどの参加者が合格していくとのこと。これだけ短期間で成果が現れるとあって、都内はもちろん、県外や北海道からわざわざ訪れる親子もいるという。

気になるのが教え方のコツだが、指導員の方は「親には練習に関与させない」ということが大事だと話していた。確かに、教室が行われているときに親たちはコース脇で子どもたちを眺めているだけだった。転んだときやうまく乗れないとき、近くに親がいると子どもたちの心にどうしても甘えの気持ちが生まれてしまい、思うように上達しなくなってしまうのだという。

"すぐに乗れるようになる"というのはもちろんだが、同教室に多くの親子が集まる理由はそれだけでなく、最近は“自転車の練習ができる場所がない”というのも一因とのこと。近所の道路で練習するのは危ないし、公園も自転車禁止の場所が多いとあって、昔と違って自転車の練習ができる場所はかなり減少している。これらの影響もあって、年々参加者は増えているのだ。

「神宮外苑 自転車の乗り方教室」の受講料は、1回1,000円のみ。自転車やヘルメットなどのサポート具は貸してもらえるので、手ぶらで参加できるのも嬉しいところだ。