待機児童の解消を目指して保育園の新設が進む中、保育士確保のためにさまざまな待遇改善策を施す動きが東京23区で進んでいる。国や都の補助事業を活用するほか、独自に手当を拡充したり特典を設けたりする内容だ。今年度予算に独自事業を組み込んだ自治体に話を聞いた。

保育園に入りやすくなるかも!? 東京23区で保育士の待遇が改善した自治体(画像はイメージ)

保育士の処遇改善、国や都の対策は

保育士の処遇をめぐっては、国や都が平成27年度から段階的に行っている改善への取り組みがある。このうち給与は「保育士等キャリアアップ補助」として、平成24年度の基準に比べてモデルケースで国が平均約3万円、都が同4万4,000円の上乗せ補助を行っており、計約7万4,000円のアップ。

また借り上げ住宅については、最大8万2,000円の家賃に対し、国・都・区市町村で合わせて8分の7まで負担する補助事業を行っており、23区のほぼ全ての自治体が取り入れている。このほか、都が修学資金の貸し付けや就職支援セミナーの開催なども行っているが、さらに区独自の対策を加えることで、足りない保育士を積極的に呼び込んでいきたい考えだ。

区独自の"特典"で保育士を呼び込む

江戸川区は保育士確保のため、今年度予算に約1億7,000万円分の新規事業を盛り込んだ。大部分を占めるのは保育士の給与加算で、区内の私立保育園などに勤務する保育士ら1,300人以上に対し、月額1万円を独自に上乗せする。また、今年から新たに採用される保育士に区内で利用できる商品券5万円分を支給。区では来年4月に過去最大となる1,000人の保育定員増を見込んでおり、今年から来年にかけて300人ほどの保育士を新たに採用する予定だという。

また千代田区では、区内の私立保育園などの常勤職員に対して、給与を月額3万円、借り上げ住宅の費用に最大4万8,000円を上乗せ補助する。同区ではこれまでも、月額2万円の給与加算や、前出の国・都との共同事業である借り上げ住宅補助を行ってきたが、今年度はさらに拡充した。

このほか、荒川区では条件付きで返済免除になる奨学金50万円までの貸与、港区や渋谷区では借り上げ住宅にかかる費用の上乗せをするなど、多くの自治体が保育士確保のための独自策を行っている。

これについて江戸川区の担当者は、「どこの区でも保育所を新設しているため、保育士の取り合いになっている。保育の質を担保するためにも待遇を改善し、たくさんの人に来てもらいたい」と話す。また、都の保育支援課は「保育ニーズも上がっており、都では4年間で7万人の保育定員増を計画している。ますます保育士が足りなくなることは必至」という。今後、保育士確保のための自治体間の競争がますます激化しそうだ。