ハウステンボスとhapi-robo stは、ハウステンボス開業25周年を記念したスペシャル企画として、300機のドローンを使った「Intel Shooting Starドローン・ライトショー」を7月22日からスタートした。8月5日までの2週間、毎日上演される。今回は開催初日のショーを見ることができたので、その模様をお届けしたい。

ドローン・ライトショーが日本初上陸

「Intel Shooting Starドローン・ライトショー」は、エンターテイメント向けに設計されたIntel製ドローン「Shooting Star」によるショーで、これまでオーストラリアやドイツ、メキシコ、シンガポール、アメリカで計100回以上開催されているが、日本では初となる。

日本初のショーを実現させる原動力となったのは、ハウステンボスの情熱だろう。今回のイベントの仕掛け人といえるハウステンボス 取締役 兼 CTO/hapi-robo st 代表取締役 社長の富田直美氏は、早くからドローンに注目。特に空撮に魅力を感じ、ドローンメーカー大手であるDJIのインストラクターライセンスを取得するまでのめり込んだという。

ハウステンボス 取締役 兼 CTO/hapi-robo st 代表取締役 社長の富田直美氏

ドローンを使ったイベントを考えていた富田氏は、自らドローンを開発しようと国内から人材を集めたが、一度はあきらめてしまっていた。そのころ、Intelがドローンを使ったライトショーを行っていること、さらにアメリカのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでドローン・ライトショー「Starbright Holidays, An Intel Collaboration」を開催したことを知り、「日本ではわれわれが初めにやるべきだ」と日本での実現に向けて取り組みを開始した。

Starbright Holidays, An Intel Collaborationの関連動画

初めは「ハウステンボスを分かってもらう」ところからのスタートだったが、Intel本社のスタッフを招待し、海の近くという立地やGPSの信号が受け取りやすいこと、ドローンの開発に向けて集めた優秀なエンジニアリングチームがいることなどをアピール。熱心なアプローチが実を結び、実現までこぎつけた。

ハウステンボスの様子。ヨーロッパの風景がそこに

Intelにおけるドローン・ライトショーの位置付け

Intelは2016年に自社ブランドによるドローンの提供を開始。現在、チップやボードを含めた開発プラットフォームの提供をはじめとして、今回実施するようなライトショーの運営、高所や災害現場での点検や監視活動といった商用向けのシステムソリューションといったビジネスを展開している。

Intel ドローン・ライトショー ジェネラルマネージャー Natalie Cheung氏

Intelは製品を開発するためのチップやソフトウェアの提供をしているが、ドローン事業のように最終製品やイベント運営を手がけるのは稀有な例だ。ドローン事業はニューテクノロジー・グループと呼ばれる部門が手がけており、従来のIntelなかったビジネスにも積極的に取り組んでいる。

Intelのドローン事業

ライトショーのきっかけは、CEOであるBrian Krzanich氏の「たくさんのドローンを打ち上げてIntelのロゴを作ったらどうなるだろう?」という発言からだったと、Intelでドローン・ライトショーのジェネラルマネージャーを務めるNatalie Cheung氏は振り返る。実際にドイツでオーケストラの生演奏に合わせて100機のドローンを飛ばした「Drone 100」で、「エンターテイメント分野におけるドローンの利用に可能性を感じた」という。

Cheung氏は、ドローン・ライトショーを新しい「ストーリーテリング」の形であり、「新しい芸術」だと表現する。また、花火が禁止されている国にとって、花火の代わりとなるものだという。もちろん、花火が禁止されていない国では、どちらか一方だけでなく花火とドローン・ライトショーを同時に開催することで、相乗効果も狙えるとしている。

ドローン・ライトショーの役割

さらにドローン・ライトショーが持つ役割として「広告」を挙げる。従来のディスプレイ広告のような平面的なものではなく、ドローンでは360度見渡せる形や3Dで表現することが可能できると説明する。Intelのドローン・ライトショーはこの3つの要素すべてを含んだものだとアピールした。

エンターテイメント向けドローン「Shooting Star」

ショーに使われるドローン「Shooting Star」は第3世代の製品。これまで100回を超えるショーの中で改良を繰り返してきた。実はハウステンボスで使う「Shooting Star」もプロペラをすべて一新したという。

Intel Shooting Star。第3世代の製品だという。正面から見ると愛嬌のある顔立ちをしている

実際に持ってみると非常に軽いことが分かる。底面にLEDを搭載。赤/青/緑/白の4色を組み合わせて40億色のライティングを表現する

四方のプロペラはいずれもケージで覆われ、万が一ほかの物体に当たっても影響を最小限に抑える

サイズはW382×D382×H83mm、プラスチックと発泡体という素材に加えて、カメラなどを省くことで重量は330gと極めて軽量に仕上がっている。底面にはLEDを搭載し、赤/青/緑/白の4色を組み合わせて40億色のライティングが可能だ。通信には2.4GHz帯の無線を利用し、通信プロトコルは独自のものだ。

Intel Shooting Starのスペック

フライトシステムは、Intelが2016年に買収したドイツのスタートアップ「Ascending Technologies」が開発した「AscTec Trinity」をベースとし、通信には2.4GHz帯の無線を利用、通信プロトコルは独自のものだという。ドローン間の距離は最小1.5mで飛行できる。

ドローンのコントロールはパイロットとコ・パイロットの2名で行う。ただし、ドローンの動きはあらかじめプログラムされており、パイロットの役割は、フライトの開始とトラブルが起きた際にドローンすばやく安全に着陸させることだ。コ・パイロットはパイロットのバックアップとしての位置付けとなる。

「Shooting Star」の場合、安全性を高めるためにジオフェンス(仮想的な境界線)を2重に設けている。1層目の境界線に近付くと、ドローンはジオフェンスの内側に移動するように動作。何らかの理由で1層目の境界線を越え、2層目の境界線に近付くとドローンのモーターをオフにして、その場に落下する仕組みがとられている。これによりドローンが人や重要なものに落下することなく、安心というわけだ。

富田氏は、これらのハードウェアとソフトウェアを踏まえ「自分たちで開発しなくて本当によかった。作ってたらいまごろえらい目にあっている。このショーのためにぜい肉をそぎ落とした機体に加えて、運用システムまで完璧に仕上げられている。プロである私の目から見ても感動する」と賞賛した。

今回のショーでは、Intelがドローンのコントロールなどオペレーション全般を、ハウステンボスとhapi-robo stがショーの演出や関係省庁との交渉といった準備を担当したという。

ショーで描かれるイメージ。以前はこうしたイメージやアニメーションの設定も1つ1つ行っていたが、いまでは専用のシミュレーションソフトウェアで行っているという。ハードだけではなく、ソフトウェアも常に改良しているとのこと

ハウステンボスでのIntel Shooting Starドローン・ライトショーでは、300機のドローンがW120m×D120m×H150mの範囲を飛行し、夜空にエイが泳ぐ様子や地球のような球体が回転する様子、ハウステンボス25周年を意味する「HTB 25」、Intelのロゴなどが描かれる。