新生東芝ライフスタイルがスタートして、ちょうど1年経過した。2016年6月30日付けで、東芝の白物家電事業を担当していた東芝ライフスタイルの株式を、中国マイディアグループ(美的集団)が80.1%取得。40年間に渡り、TOSHIBAブランドを継続しながら、日本をはじめ、グローバルで白物家電事業を展開する。

東芝本体が迷走するなか、東芝ライフスタイルは、2016年度下期(2016年7~12月)は黒字化。だが、東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長の自己採点は50点と自らに手厳しい。そして、さらなる国内シェアの回復、グローバル展開の加速など、今後の事業成長にも意欲をみせる。また、今年度は、2018年度からスタートする中期経営計画を策定する重要な1年にもなる。東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長に話を聞いた。

東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長

原発事業発の東芝危機再び…

――東芝が大きく揺れています。東芝の白物家電事業は、2016年6月30日から、中国マイディアグループ傘下となっていますが、TOSHIBAブランドで事業を推進する上で影響は出ていませんか。

石渡: ご指摘のように、東芝という会社そのものが大きく揺れ動いています。

ただ、これは、周知のように、東芝の白物家電の話が問題ではなくて、原子力発電事業などを中心としたものです。東芝ライフスタイルの白物家電事業の方針や姿勢に影響するものではありません。東芝ライフスタイルは、日本のお客様に安心して、TOSHIBAブランドの白物家電を使っていただくことに、これからも力を注いでいきます。日本には、東芝の家電商品を使っていただいている方がたくさんいます。子供の頃に家で使っていた家電が東芝だったという人も多いですし、いま使っている家電が東芝であるという人も多くいます。ただ、そうした方々でさえも、もう一度、東芝の家電に買い換えてもいいのかと悩みはじめていることも確かに感じます。

たとえば、2016年6月30日付けで、白物家電事業を担う東芝ライフスタイルが、マイディアグループ傘下で事業を行うことを発表した際に、東芝の白物家電は、中国企業の傘下に入ってしまうのか、これまで東芝が白物家電事業でやってきた品質や性能、使い勝手が損なわれるのではないか、といった懸念があったと思います。しかし、2016年8月の会見で、東芝の白物家電事業がマイディアグループに入る理由や、それによってもたらされるメリット、今後の事業戦略を説明し、それが各メディアを通じて発信されたことに続き、2016年12月には満島ひかりさんを起用したテレビCMを行ったことで、東芝の白物家電の継続性に対する安心感を持っていただけたと思います。中国企業による買収によって発生するリスクという不安については払拭できたと考えています。

しかし、2016年12月に、東芝がウェスチングハウスを巡って、巨額の赤字が発生することがわかり、さらに、決算が正式に発表できないという事態がいまでも続いています。この動きを捉えて、「東芝の白物家電製品を購入しても大丈夫なのか」という声が出始めているのは確かです。今度は、TOSHIBAブランドの商品に対して、別のところからのリスクが発生しているわけです。

昨年末、東芝の原発事業において巨額赤字が発生するとの発表が…。2016年12月、会見に臨む東芝の綱川社長

東芝の白物家電に買い換えても安心であることを訴えるためには、白物家電事業は、これまでと同じ品質や性能、使い勝手を提供し、それが、ずっと続いていくことを、改めて示す必要があると考えています。

東芝の白物家電事業は、東芝ライフスタイルが引き継いでいます。その点は、量販店や、東芝ストアをはじめとする販売店の間では理解されています。そして、量販店や販売店からは、「大いに期待している」という声をいただいています。とくに、東芝傘下のときには、開発投資に余力がなく、商品開発ができなかったのに対して、マイディアグループに入ったことで投資ができるようになり、商品群が充実する点に期待をいただいています。