ソフトバンクグループは7月20日、都内で「ソフトバンクワールド 2017」を開催した。基調講演に立った孫正義社長はこれまでに買収・投資した有望な企業を紹介しつつ、自身が考える情報革命の未来について語った。それはどのようなものだろうか。

情報革命時代の「ジェントリー」を目指すソフトバンク

孫社長は登壇後、18世紀~19世紀にかけて起こった産業革命、特にイギリスにおける産業革命について触れた。この時代、フランスとの覇権争いに勝利したイギリスは事実上の覇権国家として安定した社会基盤を入手する。このとき、産業や社会の振興に大きく貢献したのが「ジェントリ」(Gentry)と呼ばれる人たちであったと孫社長は指摘する。

いわゆる「ジェントルマン」(Gentleman:紳士)の語源になった彼らだが、彼らは広大な土地を運用して得た資産を所有していた(孫社長はジェントリについて、騎士階級から貴族になったと説明したが、厳密には地方の大地主であり、上流階級ではあるものの貴族には数えられない)。

そして彼らジェントリが毛織物工業などを経て蓄財した資産が、産業革命において紡績機や蒸気機関といった新技術の発明に投資され、高度な技術が発達。やがて資本主義への移行を迎えた、というわけだ。

このように新しいテクノロジーの発明は世界そのものを変革させる力があるとした上で、孫社長は、約200年前に起きた産業革命が主に「身体能力の拡張」であったのに対し、20世紀末にスタートし、今まさに進行中である情報革命は「知能の拡張」だと指摘する。そして産業革命で発明され発展した発動機や発電機が近代産業の中心にあったように、情報革命で発明された人工知能があらゆる産業の中心に位置付けられるとした。

産業革命では自動車や鉄道、飛行機といった、人間の身体的な限界を超える発明が多くなされていることを指摘。人工知能の世界では人間の知性の限界が問われることになる