【レポート】

共働きパパたちの覆面座談会 - 妻の言うことは"ごもっとも"なんだけど……

これまでマイナビニュース編集部では、男性学の第一人者、大正大学の田中俊之准教授と共に、博報堂丸井グループサイバーエージェントと、さまざまな職場で働くパパたちのお悩みを伺ってきました。今回は特別編として、異なる業種のパパたちに集まってもらい、覆面座談会を開催。顔出し・名前出しナシだから話せる、より深い"パパの本音"とは?

男性学の第一人者、大正大学の田中俊之准教授が議論をファシリテート。共働きパパたちの本音を聞いてみた

参加者

田中俊之 准教授
大正大学 心理社会学部 人間科学科 准教授。社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。自身も1歳児の子どもを持つ育児中のパパ。単著に『男性学の新展』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか! 』、共著に『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』などがある
Aさん(40):
妻と1歳の息子を育てる3人家族。夫婦共にフルタイム勤務だが、子どもを保育園に入れることができなかったため、妻は育児休業を延長中。本人いわく「家事・育児に関する妻の要望に応えようと、大変だけれど耐え続ける日々」を送っている。
Bさん(33):
妻と1歳の息子を育てる3人家族。夫婦共にフルタイム勤務だったが、妻は育休を経てこの春に職場復帰し、現在時短で働いている。「飲み会で深夜2時に帰宅」「子どもが夜泣きしても起きない」など、怒られても仕方がないことを、"申し訳ない"と思いながらやってしまうことがある。家庭では、平日朝、土日の家事・育児分担を担っている。
Cさん(32):
妻と3歳の娘を育てる3人家族。妻はフルタイムで事務の仕事をしていて、子どもは保育園に預けている。妻に育児の負担が偏りがちで、夫婦ゲンカになることも多々あるのが現状。最近転職し、帰宅時間が早くなったため、家庭内での役割を再構築しようと奮闘中。

"仕事のパフォーマンスが下がった"と思われたくない

田中: みなさん、家庭内での家事・育児分担にお悩みをお持ちとのことですが、「家事・育児分担は夫婦がフェアに行うべき」という考え方について、正直どのように思っていますか?


Bさん: 正直なところ、フェアでなくてもいいのでは? と思います。実際、僕の家庭ではフェアに行うことなんて無理です。営業の管理職を務めているのですが、部下や取引先とのやりとりをしたり、接待をしたりしていると、18時に退社するのは難しく、平均的な帰宅時間は23時。そこから家事をするのは、物理的に難しいのが現状です。一方で、妻は時短勤務なので、家事・育児に時間を割けると思います。

僕は、仕事をしているより、家事をしている方がつらいと感じるので、役割を交換することはできないけれど、分担をフェアにもできないなと思います。妻がフルタイム勤務に戻った時には、働き方を考え直す必要があるのかもしれないですけど。

田中: 仕事もやります、家事・育児もやりますというのは、有り得ないのではないかということですね。子どもができても、仕事の量は減らないとなると、いかんともしがたいですよね。


Aさん: 子どもができてから、早く帰宅するようにはしていますが、仕事の量が減ったわけではないので、結局職場でできなかった分を、家に持ち帰っています。子育て環境に合わせた仕事の仕方があるとは思いますが、それを会社が認めてくれるのか、雰囲気として"良し"とされるのかということとは、別の問題ですよね。

僕の職場には子持ちが少ないので、「子どもができたからといってそこまで大変なの?」という認識を持っている人が多いと思います。そこで「最近、パフォーマンスが下がったよね」と思われるのは、つらいなぁと……。

Cさん: 僕自身もフェアに分担するのは難しいのではないかと思っています。転職したことで、家庭で過ごせる時間が増えたのですが、家庭での時間が増えれば増えるほど、「これもしないの?」「あれもやってほしい!」と妻が家事・育児分担を求めてくるようになりました。ただ、いくら共働きとはいえ、職場での活動時間は、僕の方が長いのに……と思います。

"家庭的なにおい"というのを、僕も職場では出しづらいですね。「子育てが大変だから、早く帰るんでしょ?」「独身の時の方がバリバリ働いていたよね」と思われるのは、嫌です。

Cさんは「『子育てが大変だから、早く帰るんでしょ?』『独身の時の方がバリバリ働いていたよね』と思われるのは、嫌」と語る

田中: では、奥さまの稼ぎがもっとあった場合に、自分が仕事を減らそうとは思わないのでしょうか?


Bさん: それは、思わないですね。

田中: これまでの調査では、妻がフルタイム勤務でも、パート勤務でも、専業主婦でも、夫の家事の時間は変わらないというのが結論になっています。子どもができて、奥さまの働き方は変わっても、「自分の働き方は変わらないだろう」となる。この点について、自己反省的に深掘りしていったら、面白いかもしれないですね。


正論は、家族の幸せにつながらない!?

Aさん: 僕たち夫婦は財布も別だし、生活費も全部シェア。だから、妻は家事・育児分担も全部半分ずつやってほしいと求めてきます。その言い分は"ごもっとも"だと思います。だから、やろうと努めているのですが、足りない状況です。

家事をするつもりはあるのですが、"まだその時ではない"と思うこと、ありませんか? 「もう少し時間が経ったら、皿洗いをしよう」と思って寛いでいると、家事を放置していると思われるらしく、テキパキと動く妻に、先に片付けられてしまうんです。家事を進めたいペースが僕と妻とで違うので、その結果、やる気がそがれてしまうというか……。

家事に関しては、妻が店長で僕がアルバイト。店長の言うとおりに動かないといけないけれど、僕自身、意識は高くないし、家事スキルも低いので、不満がある状態ですね。

田中: 奥さまにとっては、"なぜ私が店長になって、教育しないといけないのか"という不満も垣間見える気がしますが、その気持ちは理解できます。


Aさん: 完全に分担をするのであれば、それぞれのやり方で家事を進めていいはずです。でも妻は、自分のやり方に従ってほしいと思っているので、要求水準が高くなります。

例えば洗剤一つにしても、"赤ちゃんの服は赤ちゃん用の洗剤で"と徹底しているのですが、僕は正直「そこまでしなくても」と思ってしまいます。でも妻から「子どものためだから」と言われると、"ごもっとも"すぎて反論できないんですよね……。

Cさん: 「ごめんなさい」と謝るか、「もうやらない」とすねるか、どちらかしかないですよね。

田中: 先ほどからAさんは"ごもっとも"という言葉をよく使われています。"ごもっとも"である以上、反論はしにくいので、苦しいですね。正論は、必ずしも家族を幸せにしないのかもしれません。


Bさん: うちの場合は、反対に僕の方が口出ししてしまいますね。賞味期限が迫っている食品を見つけると「なぜこの食材を優先して料理に使わないの?」とついつい言ってしまいます。掃除の仕方にもこだわりがあるので、全て自分が担当しています。確かに、家庭は幸せになっていないかもしれないです……。

"自分の語る正論が家庭を幸せにしていないかもしれない"と語るBさん

田中: 家族だと、言いたくなりますよね。正しいことを追求した方が、家族は幸せになる気がしてしまいます。でも、家族の幸せを願って合理的で正しいと思うことを訴えたとしても、チームとしてはワークしないのかもしれないと、自分でも反省します。相手との距離をどう保つのかというのが、大事なのではないかという気が最近しています。


乳が出ない自分に限界を感じる

Aさん: 夫婦間のコミュニケーションは大変だと感じることがありますが、子どもとのコミュニケーションは取れていると思います。ただ、父親の限界は母乳があげられないことですね。
水分・栄養補給に加えて、授乳って精神安定剤的な役割があるように思うんです。"母乳があげられない現実"に直面すると、基本は母と子で、僕は使用人なのかなという気がしてしまいます。超えられない壁を感じますね。

Bさん: 劣等感を覚えることはありませんが、「ずるいな」と思うことはありますね。

Aさん: 自分でもおっぱいをくわえさせてみようとしたことがあって……最初は少し吸い付いてくれたのですが、母乳が出るわけではないので、その後は全く反応してくれなくなりました(笑)。

田中: 僕もトライしたことがあるのですが、うちはくわえてくれませんでした。そこの悲しさってありますよね、母乳って、強いなぁと思います。


Cさん: ママと一緒じゃないと寝てくれなかったりするので、そういう時に僕も父親としての限界を感じることはあります。

Bさん: 僕が寝かしつけをすると20分かかるのに、妻の寝かしつけは母乳で10分……となると、寝かしつけはお願いしたい気持ちになりますね。

今のお父さんは子どもを見ている

Aさん: うちの場合は、僕の方が寝かしつけがうまくて、抱えるとすやすや眠るんです。でもその結果、妻が母親としての自信を失くしてしまうのではないかと思っているので、あまりアピールしないようにしています。

Cさん: 妻の母親としてのプライドを守らなければという気持ちは僕も分かります。

田中: 奥さまを傷つけないようにしようと思われるのは、素敵なことですね。


Aさん: 優しさというよりは、そこで不機嫌になられるのは困るから、刺激しないようにしようという思いの方が強いです。本当は「どうだ、すごいだろう!」と言いたいのですが、夫婦の関係性を大事にしたいので。

田中: 誰かから評価されているわけではないのに、子育てに関してモチベーションを高く保てているのはなぜですか?


Aさん: もともと全く子どもに興味がなかったのですが、いざ子どもができてみると、子煩悩になってしまって。"この子のために何かしてあげたい"という思いが自然と芽生えるんですよね。

妻の出産前と後で子どもへの思いが変わったというAさん

Bさん: 僕の場合も、うまれてきた瞬間、「わが子ってなんてかわいいんだろう」と思いました。妻は最初、育児が大変でつらくて、あまりかわいいと思えなかったそうなのですが、僕があまりにも「かわいい」を連呼するので、楽になったみたいです。

田中: お父さんが素直に「かわいい」と言えることは、奥さまが子育てに自信を持つきっかけになりますね。お父さんは出産しないので、体力もあるし、精神的なゆらぎも少ないはずで、だからこそできることかもしれません。


Cさん: 僕も子どもに興味がなくて、むしろ嫌いな方だったのですが、うまれた時に感動して、それはもうかわいくて、今はだいぶ成長してきましたが、ずっと「かわいい」と思っていますね。こんなに人に愛情を注げるのは、これまでの人生で初めてです。

田中: 3歳になると、だいぶしっかりしてきますよね。


Cさん: 言葉を話すようになって、また違う楽しみがありますね。

Bさん: うちは"ママ"しか話さないので、悲しいです(笑)。

田中: パパって呼んでほしいですよね。


Aさん: 子育ては、成長に応じた喜びが待っているのでやっていけますね。

最後に田中先生から感想をいただきました。

田中先生: 今回参加してくださったお父さんたちは、子どもにちゃんと接しているからこそ、昨日できなかったことが今日できているという"子どもの成長"に気づけているのではないでしょうか。

50代以上になると「子どもはいつの間にか大きくなっていた」というお父さんが多いですが、今のお父さんは子どもを見ているなと思います。お父さん自身も、家族のことをしっかり考えているということを、伝えられたらいいですし、世の中にも伝わったらいいですね。

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