汗のメカニズムがわかったところで、「人はなぜ汗をかくのか?」についてもう少し深掘りしていこう。実は発汗の役割は体温調整だけではない。ここでは、エクリン汗腺とアポクリン汗腺から出る汗の要因を挙げてみた。

汗が出てくる要因は多岐にわたる

■エクリン汗腺

(1)気温の上昇
(2)緊張やストレス
(3)運動
(4)疾患・外傷・炎症
(5)妊娠・閉経・肥満
(6)食事(香辛料)

■アポクリン汗腺

(1)遺伝的要因(家系)
(2)人種的要因(黒人>白人>日本人の順で発汗の量が異なる)
(3)年齢的要因(思春期以降の性ホルモンの増加により)

多汗症の定義とは

エクリン汗腺の発汗の要因だけでも、緊張やストレス、運動、食材までと実に多様。これに伴い、注意すべきことは汗の量。明らかに正常値を超える症状を「多汗症」と定義づけているが、汗の量は個人差が大きく、体質的な「多汗状態」と疾患としての「多汗症」との明確な区別は難しいのが現状だ。

ただし、以下のような症状がみられる人は多汗症の可能性が高いため、治療の必要がある。

・発汗症状が6カ月以上も続いている
・仕事や勉強などのノートや書類が汗でベタベタになってしまう
・ハンカチが手放せない
・握手ができない
・お風呂に入ると手がふやけた状態が常にある
・わき汗がひどい
・シャツやブラウスの汗じみや黄ばみが目立つ

汗を減らすには「ボトックス注射」が効果的

これらは主に情緒的・精神的刺激によるもので、手のひら、顔、足の裏に多い症状。見た目にも目立つため、社会生活や日常生活に支障をきたしているケースが大半だ。ストレス社会で生きている現代人の代表的な病気の一つかもしれない。

多汗症の具体的な治療法として一般的に知られているのは、ボトックス注射。ボトックス注射といえば、しわ治療として知られているが、A型ボツリヌス毒素製剤は神経終末におけるアセチルコリンの放出を防ぎ、神経から汗腺への情報伝達を遮断することで発汗を抑制してくれる。

わきの場合は1~2cm間隔で20~25カ所、手のひらの場合は25~30カ所に注射する。個人差はあるが、注射をしてから数日後に効果が現れ、汗の量はかなり軽減されるという。

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