シャープは7月13日、大阪府堺市のシャープ本社で報道関係者を対象に8Kセミナーを開催した。ここで同社が強調したのは「シャープの液晶ディスプレイ事業は、8Kを中心に成長戦略を描く」という点だった。(前編はこちら)

前編で説明したように、8Kをエコシステム化することで他社に先んじるシャープだが、8Kにここまで注力して勝算はあるのだろうか。

実際、現時点で8K戦略を明確に打ち出しているのはシャープだけであり、競合各社のテレビ事業は4Kを主軸に据えている。また、2018年12月には多くの4K実用放送が開始されるものの、8K実用放送を行うのはNHKの1局だけという現実もある。さらに言えば、その後に8K放送を各局が追随するのかどうかは見えていない。

また、光回線を用いた8K品質の動画配信については容量が大きすぎるため、より効率的な圧縮技術の開発が求められる。「8Kならでは」と呼べるコンテンツを視聴するにはハードルがまだまだ高いといえるのも確かだ。

しかしシャープは、その点でも自信をみせる。

シャープ デジタル情報家電事業本部 副本部長 喜多村 和洋氏

シャープの喜多村和洋 副本部長は「4Kテレビの立ち上がりを見ると、わずか4年でテレビの販売金額の7割を4Kが占めるにいたった。しかしその間、4Kの実用放送は行われていない。これと同じことが8Kでも起こる。4Kが7割を占めるまでに4年かかったが、8Kが7割を占めるようになるまでに、1年かからないかもしれない」と大胆な予測をする。

そして、喜多村氏は「8Kテレビの高画質は、液晶とプラズマとの比較、あるいは液晶と有機ELとの比較よりも、わかりやすい訴求ができるはず」と考えている点も見逃せない。

「4Kテレビでハイビジョン放送を視聴すると、2Kテレビで視聴するよりもいい画質で見られるように、8Kテレビで見ると、4K放送もよりきれいに見える。8Kの実用放送がなくても、画質の良さを訴えることができる」(喜多村氏)

8Kテレビの価格問題については、先行している優位性を生かし、当初こそ高止まりするものの、鴻海グループのバリューチェーンを生かし、4Kテレビに対しても競争力を持った価格設定が可能になるかもしれない。こうしたパワーを持つ点も、これまでのシャープとは置かれた立場とは異なる。その点で、シャープの8Kテレビに対する仕掛けには注視しておく必要がある。

総務省による4K推進のロードマップ