Appleは2017年に入って、モバイル通信のベースバンドチップとして採用しているQualcommと法廷で争う姿勢を示した。米国時間2017年7月19日、Appleは、FoxconnなどのiPhone等の委託製造先企業4社とQualcommとの間で争われている訴訟に参加する新たな訴えを、米国カリフォルニア州サンディエゴの連邦裁判所に提出した。

AppleがiPhone、iPadなどの通信可能なデバイスの製造委託契約をしているのは、Foxconn、Pegatron、Wistron、Compalの4社。2017年5月に、Qualcommは4社を相手取った裁判を起こしており、これに対する反訴、という位置づけになる。これまでもAppleはこれらの企業とQualcommが対峙する上でのサポーター的な役割だったが、今回正式に、製造委託先企業と法廷で共闘することになった。

Appleは現在、Qualcommに対して、製造委託先から支払われるライセンス料に関して、その支払いを止めている状態だ。これによってQualcommは、同社の決算からもAppleからのライセンス収入を除外せざるを得なくなった。6月末締めの四半期の売上は、60億ドルから52億ドルへと下方修正を余儀なくされている。

Appleは2017年1月に、Qualcommから10億ドルあまりの販売調整金の支払いなされていないとして提訴。支払いが履行されていない理由は、韓国の公正取引委員会に対して、Qualcommが展開しているビジネスモデルに関する証言を行った事が原因だ。Qualcommは韓国の同委員会から10億ドルの制裁金を課せられた。

さらに2017年6月、Qualcommの不正なビジネスモデルによって、自由な製品開発や販売ができなくなっているとして、Appleは訴訟を起こしている。Appleは過去の判例や、米国を含む各国の公正取引委員会がQualcommのビジネスモデルを問題視していること、中国や韓国のように既に制裁金を課している事実を背景に、商取引の慣習を是正するべきだとしている。

他方、Qualcommはこの状況に対して、iPhoneやiPadなどのApple製品に対して、6件の特許侵害で同製品を米国に輸入しないことを求める裁判を起こしている。

今回の問題の長期化が、Appleのビジネスに与える影響は軽微であるとしており、またAppleは問題が是正されれば、引き続きQualcommとの良好な関係を築いていくこと、そして正当なライセンス料を支払うことを確認している。