続けて、喜多村氏は、「シャープの映像商品は、顧客への感動を与えられる映像は何かを追求するものであり、感動は真のリアリティ、本物感によって実現される。これを実現できるのが8Kの高精細技術であり、8Kは本物感を目指す究極のディスプレイになる」としたほか、「現時点では、8Kによる高精細テレビを、いち早く実現できる唯一の技術が液晶であり、液晶パネルを採用した8K高精細テレビを製品化する。そして、いち早く8Kおよび4K放送の受信機関連機器をラインアップしていく」と語る。

4Kテレビでは完全に出遅れたシャープだが、8Kテレビではその反省を生かして、スタートダッシュをかけることになる。

シャープが、8Kに力を注ぐもうひとつの理由が、8Kエコシステムを活用した新たな提案が可能になるという点だ。ここでは、コンシューマ領域のビジネスチャンスだけでなく、ビジネス領域での広がりも期待している。

シャープ 研究開発事業本部 本部長 種谷 元隆氏

シャープ 研究開発事業本部 本部長の種谷 元隆氏は、高臨場映像配信システムとしての活用などによる映像配信や、8Kビッグデータを活用した解析サービス、高速検査システムや高精度3D計測機器などによる業務革新、多人数同時認識監視カメラなどを活用したセキュリティソリューション、8K映像を応用した手術装置などによる医療分野での活用などを例にあげながら、「臨場感、実物感、見えなかったものが見えるのが8Kの特徴」だと位置づける。

「8Kになって、初めて、人間の視覚能力の限界を超えた解像度を実現できる。4Kまでの時代は、人間が教師となり、視覚というものを機械に教え込んで、性能を高めてきた時代であった。だが、8K時代の到来は、人間の目では見えないものを捕らえ、記録し、分析し、見える化する時代に入ってくる。ディープラーニングやAI技術を採用した映像の認識、解析、生成がおこなれ、人が気がつかない変化や特徴を抽出し、現実の感覚を超越した体感が可能になる」(種谷氏)

例えばスポーツスタジアムや運動会の会場では、8Kカメラで全体を撮影しておき、あとからAIを活用して、好きな選手やボールの行方などを自動追尾して、4K画質で切り出して編集することも可能だ。

エンターテインメントにおける活用例

セキュリティでも8Kが活躍

また、セキュリティカメラの映像を8K化することで鮮明さが増して顔認識の精度が一気に高まるほか、医療分野では手術において、肉眼では見えないような映像を映し出すことが可能になるという。「2Kではカメラと患部の距離が5cmまで近づかなくてはならなかったが、8Kであれば15cm程度まで引くことができる。手術が楽になるといった効果もある」(種谷氏)。

医療分野でも8Kが重要視される

後編は20日に掲載します