2017年度の「科学の甲子園」と「科学の甲子園ジュニア」の全国大会に関する記者説明会が7月13日都内で開かれ、大会日程などの概要が発表された。

科学の甲子園は、科学好きの中高校生の拡大やトップ層育成を目的に、国立研究開発法人科学技術振興機構の主催で2012年(中学生対象のジュニア大会は2013年)から毎年開催されている。全国大会には各都道府県大会での選考により選ばれた47チームが出場し、実験や筆記などの理数系課題に取り組む。

科学に興味を持つ生徒たちが、仲間とともに挑戦できる場として年々人気が高まっており、昨年度の都道府県大会には高校生約8,200名、中学生約25,000名が参加した。

女性研究者拡大の糸口としても期待

説明会冒頭であいさつした、科学の甲子園および科学の甲子園ジュニア推進委員会の漆原秀子委員長(筑波大学名誉教授)は、「困難な課題にチームでチャレンジすることにより、教科書や分野の枠に縛られない幅広い好奇心を育てることが本大会の特徴」とし、「中高校生の科学への興味を広げ、伸ばすことが期待されている」と述べた。

「女子生徒のさらなる参加を促したい」と抱負を語った漆原秀子委員長

また、日本の女性研究者の少なさを指摘し、「科学の課題にチャレンジする女子生徒を増やすことを通じて、女性研究者の母集団を拡大したい」と話した。

日本の研究者に占める女性の割合は14.4%(内閣府・平成26年度男女共同参画白書)と、先進国の中で著しく低い。特に理工系分野は大学教員の女性割合が他分野に比べて少なく、男女共同参画社会の実現という点でも課題になっている 。

内閣府・平成26年度男女共同参画白書による日本の研究者に占める女性の割合は14.4% (資料提供:JST)

こうした中、科学の甲子園(高校生)の都道府県大会に参加する女子生徒は増加傾向にあり、昨年度の第6回大会では過去最高の29.9%に達した 。漆原氏は、「大会への参加は年々増えているので、今後さらに拡大したい。高校生と直接対話する機会をつくるなどして、生徒や学校現場の実態を捉えたうえで、意義のある方策を探っていきたい」と述べた。

科学の甲子園 都道府県大会における女子生徒の参加比率。年々、参加総数そのものが増える中、女子の比率も高まっている (資料提供:JST)

優勝チームは米国の科学競技会に参加

前回大会となる「第6回 科学の甲子園 全国大会」は2017年3月に茨城県つくば市にて開催された。初出場14校を含む47校・361名が参加し、岐阜県立岐阜高等学校(岐阜高)が初の総合優勝を飾った。記者説明会には優勝チームを代表して髙島優さん(3年)と桐原聖子さん(3年)が出席し、大会の感想などを語った。

岐阜高は第1回大会から6年連続で全国大会に出場し、過去には上位入賞も果たしている。キャプテンとしてチームを率いた髙島さんは、「これまで学校が培ってきたノウハウが、僕たちのチームの事前準備に活きた。先輩たちのためにも、今年こそ優勝したいという強い思いが勝因だった」と振り返った。

科学の甲子園全国大会の優勝校は例年、アメリカの中高校生向けの科学競技会「サイエンス・オリンピアド」に特別参加している。岐阜高チームも5月にオハイオ州で開かれたサイエンス・オリンピアド2017に出場し、ゴム動力の紙製ヘリコプターの滞空時間を競う種目など4種目に挑戦した。

大会準備では地元の模型店などでアドバイスをもらったという桐原さんは、「競技はもちろん、アメリカの生徒たちとの交流も刺激になった。私たち日本の高校生も世界に目を向けて、いろいろな経験をすることが大切だと感じた」と語った。また、「女性研究者の拡大に向けた課題は?」との記者の質問には、「性別に関わらず、誰もが好きな道に進める社会づくりが重要。女性と男性が協力して研究できる環境をつくることが大切では」と答えていた。

髙島優さん(左)と桐原聖子さん(右)は国内外の大会での成果を報告した

新たな「科学の甲子園」の開催地は"さいたま市"

科学の甲子園と科学の甲子園ジュニアの全国大会は、2017年度から開催地が変更になる。「第7回 科学の甲子園 全国大会」は、2018年3月16日から19日に、さいたま市のソニックシティなどをメイン会場に開催。一方の「第5回 科学の甲子園ジュニア全国大会」は、2017年12月1日から3日間の日程で、茨城県つくば市にて開かれる。

各都道府県大会は、7月以降に各地で順次実施となる。全国大会出場を目指す生徒たちの挑戦に注目したい。