単純なタスクを大量に行うようなもの、例えばExcelのセルへのデータの入力のようなものや、HTMLのテーブルのような定型的な部分への書き換えなどは少々のノイズがあってもいっこうに気にならない。

しかし、調べ物や文章を書くような仕事、言うなれば指を動かさずに思考しなければならない仕事のような場合は、BGMがあったほうが筆者は集中できる。文字量の多い、もしくは時間のかかることが予測される原稿では、テンポの速いロックやゲームサウンドを再生する場合もあれば、クラシックやピアノ中心のゆったりした曲もいい。

無音であっても筆者はまったく結構だが、無音だと集中できないという人も結構いるようだ。また、喫茶店や図書館ですら全くの無音というスペースはなかなか昨今では期待できないところ。働き方改革は、ドラスティックに一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方を実現するためとも形容される。テレワークやダイバシティというのもそのチャレンジだ。ふと、職場での音はどうなのだろう?とよぎる。

来客者が訪問するスペースや集中する作業が必要なデスクスペース。画期的な企画が期待されるミーティングスペース。当然、業種や職種、業務内容によって期待される職場空間の役割は異なるだろうが、働き方にも大きく関わるテーマのひとつではないだろうか。部署や役職の壁を気にすることなくアイデアを出し合うことがイノベーションには欠かせないことは間違い無い。ナレッジの共有もしかり、フリーアドレスという座席の配置の根幹にもこの考え方がある。しかしすべてが無秩序に混在してしまうと台無しになる場合もある。

コクヨエンジニアリング&テクノロジー公式サイト

コクヨグループのコクヨエンジニアリング&テクノロジーが2015年に実施した「オフィスの音環境」に関するアンケート結果は大変興味深い。社内会議中に会話漏れが気になることで会議に集中できないと応えた人が6割、これは機密事項や個人情報など機密性が高い会議の場合だ。裏付けるように役員・部長クラスの8割は応接・商談時の会話漏れを気にしている。アイデアベースのラフな企画会議では、周囲の音を気にすることも無いだろう。会議の内容によって、音環境に求められる役割が異なるのだ。同社では、特殊な防音パーティションやサウンドマスキング効果を持つ音を配置することで状況に応じた職場の音環境を創り出している。

また、大手有線放送のUSENはBGMを追求する企業。飲食店、小売店やホテルと一括りにできない多様性のある各店舗、大人の美食空間とオーガニックなカフェ、洗練されたインテリアショップが同じBGMで良いわけが無い。同社のサイトでは、オススメBGMの試聴も可能だが、聴いていて改めて気付かされる。J-POP、洋楽、ジャズ、カフェ&ラウンジ、ヒーリング、クラシック、イージーリスニングから、聴きたい曲がリクエストできるチャンネルと500を超えるチャンネルが用意されている。

そんなUSENは、2013年よりオフィス用のチャンネル「Sound Design for OFFICE」も用意しており、オフィスのノイズ軽減やストレス緩和、作業効率向上から終業時刻アナウンスとこちらも幅広い。現在では、夏推奨のコーディネートとして涼感ボサノバやウクレレでの心地よいBGMもコーディネート例として掲示してある。根を詰めすぎても良くないし、弛緩しすぎても良くない。他の企業のフロアの様子を見る機会はあまり無いものだが、"減り張り"の効いた働き方に"音"は意外にも重要なファクターではないかとふと思ったのであった。