クリエイターが体験する山間部一軒家のサテライトオフィス

今回、鯖江市の吉谷町にある山間部オフィスを取材してきた。木造瓦葺き2階建ての一軒家(空き家)で、1階部分をサテライトオフィスとして整備。5人くらいの仕事環境だ。数カ月前にFTTHの提供エリアとなったそうで、FTTHがなければサテライトオフィス化は難しかっただろう。

鯖江市吉谷町の山間部オフィス

内部はまさに住宅そのものだが、しっかりとリノベーションされ、とてもきれい。寝泊まりもできる。周辺は閑静、見晴らしも空気もすがすがしいと、日ごろ東京都心で働いている身としては、このような仕事環境に憧れと若干の戸惑いを感じてしまう。最寄りのスーパーやコンビニが車で約10分だが、慣れと買いだめで何とでもなる。

間取り

このオフィスでお試し勤務するのは、住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULLのグループ企業、LIFUL Marketing Partnersだ。サイトデザインやコンテンツ制作など、クリエイティブ部門のメンバーがサテライトオフィスを体験する。

クリエイティブワークの良いところは、高性能なPCと液晶ディスプレイ、ソフトウェアがあれば、仕事ができること

田舎の一軒家でクリエイティブワークをすることになったメンバーに話を聞いたところ、Adobe Creative Cloudアプリケーションがあれば、仕事場所はどこでも何とかなるという。静かな環境、自然や庭など、集中かつ開放的に作業できるという言葉が印象的だった。「東京の無機質なオフィス、仕事以外に取られる時間など、マイナス要素を自覚しましたね。東京のオフィスとは、VPNを通してリモートデスクトップを使ったり、ビデオ会議を使ったりすれば、不便は感じません」(メンバー)。

上段右がLIFUL Marketing Partnersの数野氏

LIFUL Marketing Partners 代表取締役社長・数野敏男氏によると、同社のクリエイティブワークは外注が多い。サテライトオフィスが軌道に乗れば、人員増と内製化を進めることが可能となり、外注費を最大70%も削減できると試算している。また、LIFULグループは、空き家のデータベース化や地方創生事業にも取り組んでおり、地方での新しい働き方を確立するためには、行政の積極性と支援が欠かせないと話す。

その点で、鯖江市はIT戦略に積極的であり、相談しやすかったという。数年後には、10人規模のサテライトオフィス開設を目指す。「会社として同じ待遇で地元の若手を採用し、東京の下請けになるのではなく、同等の仕事、またその土地ならではの仕事ができる環境を創っていけたら」(数野氏)。