「マイナビオールスターゲーム2017」(14日・ナゴヤドーム、15日・ZOZOマリンスタジアム)の中継で解説を務めた元ヤクルトの古田敦也氏。現役時代の2006年からは選手権監督を務め、翌年には現役引退と共に監督も退任。ヤクルト一筋18年の名捕手として知られ、2015年には殿堂入りを果たした。冷静な分析で数々の戦局を乗り切ってきた古田氏は、プロ野球解説者という仕事をどのように捉えているのか。第1戦終了後に話を聞いた。

古田敦也氏

――第1戦で勝負の決め手となったシーンは?

決勝打は途中出場の内川選手のセンター前ヒットでした。大谷選手がDHで3番を打っていましたが2打席凡退、その大谷選手の代打として出場したのが内川選手です。そしてその内川選手にチャンスが回ってきて、きっちり決勝タイムリーを打ってMVPに。栗山采配が当たったともいえますが、このあたりが勝負の綾だったと思います。

――これまでのオールスターで印象に残っているシーンは?

名勝負はたくさんありますが、阪神の藤川が西武のホームラン王・カブレラにストレート宣言して全球ストレートを投げたシーンが印象に残っています。最後はカブレラも思いっきり振って空振り三振に。あのシーンはオールスターらしくて面白かったですね。

――解説者になってよかったと思えるのはどんな時ですか?

象徴的なものは特にありませんが、18年間監督含めてずっとグラウンドにいたので、やはり外から見たら分かることもあるんだと。プレーしている時は自分がいちばん近くで見ているわけですから、自らの決断は「間違いない」となる。もちろん、他人の意見に耳を貸さないという意味ではなくて、とはいえどちらかと思ったら優先するのは自分。それが解説者になって一歩引いたといいますか、俯瞰で見るようになりました。また、他球団の選手を取材することによって、今まで見えなかったことがよく見えるようにもなります。そういう意味でいうと解説者をやることによって、もう選手ではないんですけど、野球観を持っている人間としての幅が広がって、成長できたのかなと思います。

――働くモチベーション、やりがいは?

この仕事は「野球の魅力を伝える仕事」だと思っています。例えば、球場で見ていると自分の「応援しているチームが勝つ」「応援している選手が活躍する」とか、そういうものに対して、打った打たない、抑えたという面白味があります。球場で見るファンのみなさんにとってはそれでいいと思いますが、われわれプレイヤーはそれだけじゃなくて、いろいろと心の葛藤であったり機微であったり、相手と駆け引きしていたりします。選手しか分からないことがありますから、そういう野球の奥深さというか、表面的じゃないところも含めて野球の魅力を伝えたいですね。それが僕たちの使命だと思っているので、責任を持ってやっていきたいです。

――解説者として心掛けていることはありますか?

基本的には「わかりやすく伝える」ということだと思います。例えば、あるピッチャーの長所を伝える時に、「すごい」だけだとファンと一緒なので、そのすごさというものを、たとえば数字なのか、立ち居振る舞いなのか、言動なのか、仕草なのか。そういうところまで含めて伝えることによって、まだみなさんが気づいていないところに気づいてもらいたい。そして次の世代、特に子どもたちに向けて、「成長する」「野球がうまくなる」というヒントになるようなことも、伝えていかないといけないと思います。

――それでは最後に、現在のプロ野球界で注目している選手を教えてください。

大谷が二刀流でメジャーに挑戦して「どこまで通用するのか」というのは一番の注目になると思いますが、僕は菅野や則本です。WBCでも分かりましたが、日本のピッチャーは十分海外でも通用するというのを過去の先輩たちも証明してきています。彼らに注目していきたいです。

特に則本は8試合連続2ケタ三振を達成しました。僕らの世代になりますが、かつて野茂が6試合連続を記録して、それを抜く人は出てこないと思っていました。現代野球は進歩すればするほどピッチャーの能力は上がりますが、バッターの能力も上がるんですよね。マシーンを使って速い球であったり、変化球であったり、たくさん打つ練習をして。そうやって、ピッチャーよりもバッターがどんどん進化しています。その現代野球で2ケタ三振の連続記録。もう無理じゃないかと思っていましたが、それをやってのけた則本という男はすごいなと感心しました。これからも注目したいです。