かつて、大手町や丸の内といったビジネスの中心ともいえる地区は、銀行の“天下”だった。こうした地区に本店・支店をかまえていなくては“銀行にあらず”といった雰囲気すら漂っていた。だが、この“銀行天下”は、バブル崩壊で一変する。

バブルの崩壊は、銀行の統廃合を急速に推し進めた。当然、銀行の数が減れば大手町・丸の内地区のオフィス需要は減衰し、ビジネス街としての価値は下がってしまう。三菱地所はこの難局に、レストランや高級ショップを迎え入れることで対応した。結果、ビジネス街としての大手町・丸の内は風貌が変わり、ショッピングやデートスポットとしても楽しめる街になった。

ちなみに三菱地所は、大手町・丸の内・有楽町にある120棟以上のビルのうち、約30棟ものビルを所有・管理する“大地主”ともいえる存在だ。同社では大手町・丸の内・有楽町、いわゆる“大丸有”地区を“丸の内”地区と呼んでいる。本稿でもそれにならってこれらの地区を丸の内地区とする。

レストランやショップの増加で休日も楽しめる街へ

グローバルビジネスハブ東京のエントランス

さて、高級ショップやレストランのほかに、三菱地所が注力したのがベンチャーの育成。2000年11月にベンチャー支援組織「丸の内フロンティア」を立ち上げ、イベントや勉強会などを通じ、企業同士の交流を図った。この動きはやがて「東京21cクラブ」という、会員制ビジネスクラブへと発展する。

ベンチャー向けのオフィススペースの提供も進められた。2007年には新丸の内ビルディングに「EGG JAPAN」を、2016年7月には大手町フィナンシャルシティ グランキューブに「グローバルビジネスハブ東京」をオープンした。

つまり、前者はオープンから10年、そして後者はオープンから1年を迎えたことになる。