トヨタが明かす3つの目的

トヨタが実証事業に参画するビジネス上の理由は、(1)FCVの普及に向けたインフラ整備を加速させること、(2)ミライや燃料電池フォークリフトなどに使用しているセル(水素と酸素を化学反応させて電力を作る部品)の外販に向けた布石を打つこと、(3)再生エネルギーを水素化して活用する事業自体のソリューション提供を新規事業に育てること、の3つだ。ここでは1つ目の理由に注目したい。

ハマウィングでのテープカットセレモニーに臨むトヨタの友山専務(中央)

トヨタはセダンタイプのFCV「ミライ」を2014年12月に発売したが、販売台数は数千台程度らしく、普及しているとは言いがたい。水素充填インフラの整備が進まないからクルマが売れないのか、クルマが売れないからインフラ整備が進まないのかははっきりしないが、とにかく、ミライを売るにはインフラ整備が不可欠なのは間違いない。

トヨタのFCV「ミライ」

インフラ整備の加速がクルマの拡販に直結?

産業車両で水素の活用が進めば、水素の需要が増えて、水素充填インフラも増える。この状況はミライを販売する上で追い風になる。トヨタが実証事業に参画した理由を、ミライの販売に引きつけて考えるとこうなる。

もちろん、次世代エコカーの本命争いでは電気自動車(EV)が先行している感じなので、FCVというクルマが実際に普及するかどうかは未知数だ。しかし、トヨタは「EVもFCVも両方必要」(友山専務)という構えなので、水素充填インフラの普及に取り組むしかないのが現状だ。実証事業で水素活用の可能性やコストなどを見極め、日本各地に事業モデルを拡散できるかどうかが、トヨタの次世代エコカー戦略を見る上で重要なポイントになる。