【インタビュー】

事業の低コスト化が期待できる新サービス「FileMaker Cloud」とは? - ファイルメーカー ビル・エプリング氏/アナンド・ベッゲラ氏

2017年7月11日、FileMaker Cloudが日本でリリースされた。FileMaker CloudはAWS(Amazon Web Services)のクラウド上でFileMakerのカスタム Appをホストする製品で、2016年9月に米国とカナダで最初にサービスが始まった。その後、世界の各地域で段階的に提供され、このほど待望の日本でのリリースとなった。

リリース当日の7月11日に、ファイルメーカー社社長のビル・エプリング氏と、FileMaker, Inc. シニア・プロダクト・マネージャのアナンド・ベッゲラ氏にインタビューした。両氏には米国とカナダでのサービス開始を受けて2016年11月にFileMaker Cloudについて聞いているが、今回はその後の情報も含めて語っていただいた。

FileMaker Cloudは「サーバーレス・クラウド」

今回は、はじめにベッゲラ氏からFileMaker Cloudについてデモを交えての説明があった。新しい製品なので、その説明に基づいてFileMaker Cloudの概要を紹介しよう。

FileMaker Cloudの利用イメージ

これまでFileMakerのカスタム App(ファイル、あるいは従来「ソリューション」と呼ばれていたもの)をネットワークで共有するには、基本的にはFileMaker Serverが必要だった。FileMaker Serverはもちろん継続している製品で、FileMaker Cloudという選択肢が増えたことになる。

ベッゲラ氏によれば、FileMaker Cloudは「サーバーレス・クラウド」と位置づけているという。サーバーの準備や管理をすることなく、クラウドでカスタム Appを共有できるという意味だ。

使いやすさについては、FileMakerとAWSが協力して開発してきたそうだ。「FileMakerのお客様は主にITの専門家ではない方々や中小企業の方々です。一方、AWSの利用者はITの専門家です。そこで私たちからAWSにフィードバックを提供し、協力して開発してきました」(ベッゲラ氏)

FileMaker Cloudにログインすると最初に表示される「ダッシュボード」(デモの画面ではなく筆者作成。以下同)

インスタンスタイプもストレージも、ボタンをクリックしてすぐに変更できる

FileMaker Cloudは、AWS Marketplaceで必要なライセンス数を購入するか、既存のFileMaker Serverのライセンスを移行(BYOL:Bring Your Own Licence)し、インスタンスを作成すれば使い始めることができる。FileMaker Cloudを管理するためのAdmin ConsoleはFileMaker ServerのAdmin Consoleとは異なるインターフェイスで、FileMaker Cloudに最適化されている。Admin Consoleのパフォーマンスが高いと、すでに使っている顧客から好評だそうだ。

インスタンスタイプはボタンのクリックで直ちに変更が行える

ストレージ容量の変更も同様

一般にクラウドを使う大きな利点のひとつはスケーラビリティだ。FileMaker Cloudでは、リソースが足りなくなった場合などにはAdmin Consoleで別のインスタンスタイプを選択して「Change」ボタンをクリックすればよい。確認のメッセージを経て、10分以内で新しいインスタンスを利用できる。ストレージの変更も同様だ。

バックアップ用のスナップショットも自動で作成

またバックアップのためのスナップショットも自動で作成されている。

リリースサイクルは4カ月

FileMaker Cloudは、顧客からのフィードバックを取り入れながら4か月のサイクルで新しいバージョンをリリースしているという。

たとえば今回の取材時のバージョンでは、利用開始時に無料で提供されている90日間有効のSSL証明書を、期限が切れる前に簡単に更新できるようになっている。これは早い段階でリリースした米国などのユーザから証明書の更新が難しいというフィードバックがあったことを受けて変更したもので、「今は7分程度で更新できます」とのことだ。

FileMaker Cloudの現在のバージョンはFileMaker Server 15のコードベースで、2017年秋の更新でバージョン16と同等になる予定だそうだ。もちろん現在も、バージョン16のクライアントからの利用は可能である。

低コストが魅力のFileMaker Cloud、AWS Marketplaceの売り上げも順調に推移

このような概要を踏まえて、さらに両氏に話を聞いた(以下、敬称略)。

-- FileMaker Cloudが使えるようになったことは、日本のユーザにとって朗報だと思います。利点や、どんなユーザにお勧めかをあらためて教えてください。

エプリング 日本のお客様にも使っていただけるようになり、うれしく思っています。FileMaker Cloudは導入の初期費用がかからず、短時間で稼働できます。スケーラビリティに優れ、管理のオーバーヘッドも最小限で済みます。セキュリティの対策も容易です。このような特長から特に中小企業にお勧めですが、もちろん大企業のお客様にもお使いいただけます。

ビル・エプリング(Bill Epling)
ファイルメーカー株式会社 社長 兼 シニア・バイス・プレジデント、FileMaker, Inc. チーフ アドミニストレイティブ オフィサー。
FileMaker, Incの前身であるClarisにおいて1996年に最高財務責任者に就任し、以来同役職で財務および情報システムやIT・施設部門を統括。過去にはApple Franceにおいて財務担当の取締役、Apple Europeにおいて租税と財務担当の取締役を務めるなど、幅広い国際的な経験を持つ

ベッゲラ FileMaker ServerとFileMaker Cloudのどちらを選ぶかは、デプロイメントの戦略によります。たとえばクラウド環境のみで使いたいということなら、FileMaker Cloudになりますね。費用については、FileMaker Cloudならサーバーハードウェアなどの初期コストが不要である上に、Amazon EC2 リザーブドインスタンスを利用すればさらに25~60%安く利用できます。

アナンド・ベッゲラ(Anand Vaghela)
FileMaker, Inc. シニア・プロダクト・マネージャ
2015年10月にFileMaker, Inc.のシニア・プロダクト・マネージャ―に就任。プロダクト・マネージャーとして15年の業界経験を有し、直近ではNetAppでの勤務経験がある。現在は主にFileMaker Cloudの担当として、複数のチームと連携し、顧客の声を製品開発に反映する活動に注力している。プライベートではゴルフ、サッカーを楽しみ、最近は家族と一緒にテコンドーを習い始めたとのこと

-- FileMaker Cloudを使うためのライセンスとしてBYOLとAWS Marketplaceでの購入の2通りがありますが、これまでに提供してきた地域ではどのような傾向が見られるでしょうか。

ベッゲラ まずBYOLは、既存のFileMaker Serverからの移行だけでなく、新規のお客様がライセンスを購入してFileMaker Cloudを使う場合もあります。弊社の販売パートナーに相談した上で購入できるからです。一方、AWS Marketplaceも新しい販売チャネルとして機能しており、新規のお客様が増えています。インスタンスベースで平均して月に31%伸びています。クラウド環境で営業担当者向けのツールを使いたい、でも管理リソースは割けないというような新規のお客様が、AWS MarketplaceでFileMaker Cloudを見つけてくれますね。AWS Marketplaceでデータベースのジャンルを選択すると、FileMaker Cloudが上位に表示されるんですよ。

FileMaker Cloudもプラットフォーム全体も進歩を続けていく

-- サーバースクリプトのスケジュールや、Active Directory/Open Directoryによる外部認証など、FileMaker ServerにあってFileMaker Cloudにはない機能もありますね。

ベッゲラ そうですね。ただ、現在搭載されていない機能の一部は今後のリリースで取り入れていく予定です。サーバースクリプトに関しては、Windows版のFileMaker ServerではOSとのやりとりがあるのでFileMaker Cloudでは難しい部分もありますが。

-- 最後に、FileMaker Cloudとは別の話になりますが、5月にリリースされたFileMaker 16ファミリーの動向はいかがでしょうか。また、6月30日まで実施されていたMicrosoft Accessからの乗り換えキャンペーンの成果はいかがでしたか?

エプリング 四半期の締めが6月30日ということもあって今日は明らかな数字をお話しできませんが、お客様の数も有効なサブスクリプションの数も目標を達成しています。FileMaker Goのダウンロード数は300万に迫っています。Accessからの乗り換えキャンペーンも成功して、新規のお客様が増えました。このように既存の製品が成功するのは重要なことです。FileMaker Cloudのような新しい製品、将来の製品への投資につながるからです。FileMaker CloudがFileMakerプラットフォームに加わりましたが、これで進歩を止めることはありません。6月に開催されたAppleのWWDCで発表された内容についても注視し、さまざまな検討をしています。何が必要とされているかを今後も常に評価し、投資も続けていきます。

なお、2017年10月23日(月)~25日(水)にパシフィコ横浜 会議センターで開催される「FileMakerカンファレンス 2017」の参加登録受付が、7月11日から始まっている。もちろん今年は、FileMaker Cloud関連のセッションも予定されているとのことだ。FileMakerプラットフォームをすでに使っている方も検討中の方も、情報収集やスキルアップのために参加してみてはいかがだろうか。

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