まとめと考察

ということで、あまり突っ込んだテストはできなかったが、一通りCore i7-7820XとCore i9-7900Xの性能をお届けした。これをどう思うか? というと、筆者としては複雑である。

とりあえず今回、Core i7-7820Xの不安定さに関しては、Engineering Sampleを使ったからということで製品版では安定していることを期待したい。少なくともCore i9-7900X程度には安定することを期待しても間違いではないだろうし、その程度安定すれば実用には差し支えはないだろう。(とはいえDxO OpticsPro 11ではやや不安定さが残っているのが気がかりだが)。

性能面で言えば、Multi Thread化されたアプリケーションではそれなりの性能が期待できる一方、Single Threadアプリケーションを多用するケースでは伸び悩みそうなのは、多コアCPUにはつきものの話なので、ここで繰り返さない。

問題は性能/消費電力比と性能/価格比である。例えばCore i7-7820X vs Ryzen 7 1800Xで見ると、確かに性能はCore i7-7820Xの方が全般的に上ではあるが、その代償は80Wの消費電力増だと考えると、素直に性能の高さを受け入れにくい。あるいはCore i7-6950X vs Core i9-7900Xでも構わないが、こちらでは100Wもの消費電力増である。

価格もまた問題だ。冒頭にも書いたがRyzen 7 1800XとCore i7-7820Xの価格差はご祝儀相場とはいえ2万円ほどある。Core i7-6950Xはもともとプレミア付きということもあり、Amazon.co.jpだと18万円超えの爆裂価格、Amazon.comでも1589.99ドルなので、これについてはCore i9-7900Xを選ぶ理由にはなるかもしれないが……。

こう考えると、Core i7-7820Xの立ち位置は極めて微妙だ。競合と2万円の価格差、80Wの消費電力増を受け入れてまでCore i7-7820Xを選ぶほどの性能差があるか? と問われた時に、筆者的にはYesと答えるのは非常に難しい。それこそDxO OpticsPro 11で毎日1,000枚単位の写真を現像するとか、毎日H.265/HEVCのエンコードをしているのでもなければ、Core i7-7820Xほどの性能は必要ないからだ。

そしてCore i9-7900Xもまた微妙な立ち位置である。もちろん現状で最高の性能を持つデスクトップ向けプロセッサであることは間違いない。が、まもなく登場するであろうAMD のRyzen ThreadRipperに立ち向かえる性能であるか? というとはなはだ心もとない。

同じく16コアのCore i9-7960Xや18コアのCore i9-7980XEが登場するまで、ハイエンドプロセッサの座を守りきれるのかというとかなり厳しそうだ。このあたり、次にIntelがどういう手を打ってくるのかがむしろ興味ある部分である。