2017年7月3日より、スマートフォン用漫画アプリ・マンガボックスにてムサヲ氏が連載している同名コミックを原作とするTVアニメ『恋と嘘』の放送がスタートした。劇中で描かれるのは、超・少子化対策基本法("ゆかり法")に基づき、政府によって性格や遺伝子レベルで適合する結婚相手が決められる世界。この相手を伝える政府通知が満16歳以上になった少年少女に届き、以降彼らはそれに則った恋愛関係を結ぶことが求められる……。

TVアニメ『恋と嘘』で高崎美咲を演じる花澤香菜

主人公は、クラスでも人気の女子・高崎美咲に小学生時代から思いを寄せる、ごく普通の男子・根島由佳吏(ネジ/CV.逢坂良太)。彼は16歳の誕生日を迎える夜に美咲に長年の思いを伝えるのだが、そこで実は美咲の側も彼が好きだったことが判明する。相思相愛となった2人だが、その直後にネジに届いた政府通知で指定された相手は美咲ではなく、会ったこともない女子・真田莉々奈(CV.牧野由依)だった。初恋で相思相愛の相手を取るか、政府が決めた科学的にも相性が合致する相手を取るか、切ない人間関係が交錯していく。

そんなネジと互いに思い合っていながら、政府通知の相手には選ばれなかった美咲を演じるのが、声優・花澤香菜。この感傷的で複雑な役どころを彼女はどうやって演じているのか、そして様々な恋愛模様が繊細に描かれる本作をどのように見ているのか。「もし自身に政府通知が届いたら?」といったところまで、様々な視点で彼女が読み解く本作の世界観を、第6話まで収録を終えた段階で聞いた。

男心くすぐる演じ甲斐ある可愛い子

――最初に原作を読んだ際の印象をお聞かせください。

16歳になると政府通知がきて、結婚する相手が決められるという設定にまずビックリしました。それを前提にした恋愛模様が描かれるので「絶対に切ない展開になるんだろうな」と。しかも美咲ちゃん視点で読んでいると本当に苦しいことばっかりで、切ない展開に苦しくなるのだけれど「すごく演じ甲斐があるんだろうな」と思いましたね。

――"ゆかり法"に対してはどんな印象をお持ちになりましたか。

ちょっと現実感があるような……でも、美咲ちゃんやネジくんもそうだけれど、恋愛していた人たちに対しての心のケアみたいなのはちょっと無視なんだなと思ったり、国が決めたことだからペナルティが存在するのかなと思ったり。そういったところも含めて、「なんと絶妙な設定なのだろうか」と感じました。

――では美咲を演じることが決まった時の感触はいかがでしたか。

原作を読んでいて、とにかく美咲ちゃんが可愛すぎて(笑)。何と言うか……私、男じゃないですけど「なんて男心をくすぐる女の子なんだろう」と!

――そうですよね、私もくすぐられました(笑)。

本当ですか!? くすぐられちゃいましたか(笑)。セリフと表情と絶妙な嘘の付き方、それがまた計算してなくて素晴らしいですよね。女子からも好かれるタイプだと思うんですよ。可愛いですし、ぶりっ子もしていないし、性格が良いから友達も多い方だと思います。心情を見ていてもすごく良い子だし、人のことを思って行動できるすごく思いやりのある子なので「なんて完璧なんだろう」と。演じるにあたっては「本心とは違うことを言っている時の加減がすごく難しいな」と思いながら、いつも取り組んでいますね。

役作りは感情移入しながら

――切なさに引っ張られすぎないように、という感じでしょうか。

そうです。そこに引っ張られ過ぎると、視聴者の方に分かり過ぎちゃうし、ネジくんにも伝わっちゃいますので。莉々奈ちゃんにネジくんのことを話している時も、どこか少しストップをかけている自分がいると思うんですよね。でも、それを出し過ぎるのもいけない……というお芝居をしている私、花澤がいるという(笑)。すごく複雑なんですよね。だから演じてみて、改めて難しい役どころだなと思いました。

――そんな難しい役をどういう風に作っていらっしゃるのですか。

本作には結構、謎の多いキャラクターが多いんですよ。例えば仁坂くん。彼の過去は、あまり語られていないし、一体誰が好きなのかも分からないですよね。それに比べると、美咲ちゃんは、ネジくんが好きということも含め、割と色んなことが語られているので、原作を読み込んで感情移入しながら作っている感じですね。

――では、美咲に一番共感できる部分はどういうところになりますか。

どこだろうな……(深く考えて)そう! 1話で、初めてネジくんに自分の気持ちをぶつける場面がありますよね。ずぅーっと小学生の頃から溜まりに溜まっていた感情を……多分、あの時って大きくなってから面と向かってこんなに長く話したのは初めてくらいの時間だったと思うんですよ。その初々しい感じは、自分が学生時代に好きな子と話している、あのちょっとくすぐったくなるような空気を思い出しましたね。

大事にしたのは初々しさの持つ空気感

――逆にご自身と一番遠いと感じた部分はどこでしょう?

美咲ちゃんは結構、大胆なんですよ。学生時代、初めての恋愛だからこそできる行動というか……「キスしよっか」っていうあのセリフ! 今は言えないですよね!? だから、ああいったセリフを見ていると「これ、どういう風に言おっかなぁ」ってちょっとニヤニヤしちゃいますね。そういう彼女の大胆さは、自分とやや離れたところで見ている感じがします。

――その大胆なところを演じるにあたって、どんな風に工夫なさりましたか。

あまり作為的にやってしまうと、きっと何か違うと思うんですよね。ネジくん役の逢坂くんとの温度感というか、2人ともソワソワドキドキしている中で出てしまった言葉という風にしたくて。なので「こう言おう」というよりは空気感の方を大事にしていますね。

――切ない、難しい役という言葉がよく出てきましたが、逆に楽しいとか「これは表現したい!」というのはどういった部分になりますか。

ネジくんが好きというテンションでお話する時の美咲ちゃんって、すごくキラキラしてるんですよね。切なさもあると言いましたけど、ネジくんをどうにか好きになってもらうために彼の魅力を莉々奈ちゃんに話していたのに、どんどん熱くなってきちゃって、力説していくところとか、美咲ちゃんの人間らしいところが出ていて、すごく良いなと感じています。「ここはもう没頭してお喋りしよう!」と思いましたね。

――花澤さんから見たネジくんはどんな男の子に見えますか?

「何かハッキリしないなぁ」とずっと思っていました。でも美咲ちゃん視点だと……彼女、ネジくんの一番好きなところは、つむじって言うんですよね。「つむじ!?」って最初はビックリしたんですけど(笑)。でも、それだけ小学校の頃からずぅーっと彼の背中を見続けて、きっと喋っていなくても彼の行動をいっぱい見ていて、滲み出る人の良さとかカッコ良さを感じてきたからこそ好きなんだろうと思うので、彼のその人柄も美咲ちゃん視点だと「良いんだろうな」と思ったりします(笑)。