【レポート】

スマホの有機ELパネル採用率は2020年にはほぼ5割に到達 - TrendForceが予測

市場動向調査企業TrendForceのディスプレイ市場調査部門であるWitsViewは7月3日、「米Appleが今秋発売する予定の新しいiPhoneの一部機種に韓Samsung Display(SDC)製の有機EL(AMOLED)パネルを採用することが報じられて以降、他の韓国および中国のスマートフォン(スマホ)メーカーやパネルメーカーは、積極的に有機ELパネルへの投資を進める動きを見せている。このため、有機ELは近い将来、グローバルなスマホ市場で主流になるのは間違いなく、有機ELパネルのスマホへの搭載率は数量ベースで2020年までにおよそ5割に達する」との予測を発表した。

図 ディスプレイの種類別に見たスマホの出荷台数推移予測(単位:百万台)と、有機EL搭載機種の比率(%)。濃い緑がTFT-LCD、薄い緑が有機EL、折れ線が有機EL搭載機種の比率 (出所:WitsView)

iPhoneへの搭載で高まる有機ELへの注目度

SDCは、2015年以来、有機EL市場でのプレゼンス向上を進めることを目指して、生産能力の拡大とともに、親会社であるSamsung Electronics以外の有力顧客を積極的に探してきた。その結果、SDCは、AppleのiPhoneサプライチェーンへと組み入れられ、2017年の秋に発売される予定の新型iPhoneに採用される見通しとなり、まさに画期的な年となるようだ。

WitsViewの調査ディレクターであるボイス・ファン(Boyce Fan)氏は、「Appleの動きを競合他社は注視している。次世代のiPhoneの仕様が明らかになるにつれて、他のスマホブランドに向けた有機ELディスプレイの供給も加速している。パネルメーカー、特に中国勢は、急速に有機ELの製造能力の増強に意欲を見せている」と述べている。

中国のパネルメーカーEverDisplay(EDO)とVisionoxは、2013年~2014年にかけて有機EL市場に参入している。また、2016年には、中国の大手パネルメーカーBOE Technology(BOE)とTianmaも、従来注力していたLTPS LCD(Low-Temperature Poly-Silicon Liquid Crystal Display:低温poly-Si)パネルから有機ELパネルに生産品目を切り変えて、有機ELの生産能力を増強しているほか、工場計画を変更し、新たにLTPS LCDパネル生産用に建てた施設を有機ELパネル工場に転換。製造設備が工場に搬入され次第、2017年の下半期から有機ELパネルの試作を開始する計画としている。

さらに、中国内では、近い将来、より多くの有機ELパネル工場が建設される可能性が高い。国内市場に潤沢な資本があり、中央政府も新しいディスプレイ技術の開発を支援しているため、コストを意識せずに投資ができるためだ。しかし、有機ELの製造にはいくつかの困難な技術的障壁がある。バックプレーン(TFT)を用いたスイッチング回路を搭載したガラスあるいはプラスチックフィルム基板)生産を完璧に行うだけではなく、有機層の真空蒸着や封じなどの複雑な製造プロセスを改善する必要があるのだ。

例えば、有機ELパネル製造のカギをにぎる真空蒸発装置は、依然として主に日韓の企業が提供している。現在、キヤノンの子会社であるキヤノントッキが製造している第6世代ハーフカット機は、市場で最も需要の高い真空蒸着システムとなっている。しかしキヤノントッキの真空蒸着装置の市場供給数は限られており、同社は、まず長年の上得意客であるSDCを優先して納入することになっており、後発メーカーがそれを導入するには時間がかかりそうという課題がある。

過去2~3年の間、SDCは小型有機ELディスプレイ市場を実質的に独占してきた。しかし、一部のスマホメーカーは、有機ELパネルを得るために単一のサプライヤに拘束されることを警戒しており、競合するパネルメーカーがSDCに追いつくよう促している。後発の中国パネルメーカーのによる増産に加えて、LG Electronicsの子会社であるLG Display(LGD)が2017年下半期に第6世代工場にてフレキシブル有機ELパネルの量産を開始することを予定しており、WitsViewでは、これが重大な転換点になるとの見方を示している。LGDの参戦は、ほかの多数のサプライヤの参戦を促し、有機EL市場の競争が激化することになるためだ。ちなみに、LGDのスマホ向けフレキシブル有機ELパネルの最初の出荷先は、Apple以外の顧客になる見込みだという。

液晶パネルからの脱却ができない日本勢

このWitsViewからのレポートには、日本のパネルメーカーの名がまったく出てこない。これは一体何を意味するのか。以下に、著者が複数の業界関係者の話を元に推測する見解を記したい。

日本勢は、韓国勢の有機ELパネル量産を尻目に、液晶パネルに固執してその改善に注力してきたが、一部の報道では、「今後のマーケット動向を見誤った致命的な判断ミスだった」との見方が示されている。ジャパンディスプレイ(JDI)の有賀社長によれば、同社は、千葉県茂原に有機ELの量産ラインを設置する計画だが、実際に有機ELを量産できるようになるのは、2019年か2020年だという。

AppleのiPhoneは、今秋、有機ELパネルを採用するモデルを提供する見込みとなっているが、その結果、AppleからJDIへの液晶パネルの注文が激減してしまい、JDIは経営危機に直面する状況になりつつある。iPhoneは、近い将来、全機種に有機ELパネルを搭載する計画だというが、こうした動きに対し有賀社長は、2018年にはAppleの要求に応えられない状況になることを認めている。シャープは、鴻海精密工業をバックに援助の手を差し伸べようとしているが、したたかな鴻海には国内に警戒感もある。

一方、そのシャープはどうかというと、6月に開催された株主総会にて、戴正呉社長は株主の質問に答える形で、液晶に絶対的な優位性があるとの持論を展開したうえで、有機ELパネルの開発も堺で行っていることを認めた。有機ELパネルは開発できても量産化の技術障壁は高く、Samsungも量産化には5年以上の歳月を必要とした。韓国勢が着実に有機ELの量産で実績を上げ、中国勢が国策で需給バランス無視の有機ELパネル量産に向けた投資を行っている段階に至り、日本勢の掲げる液晶パネルの機能を上げる、という戦略で果たして今後、生き残れるのだろうか。

有機ELの先には、マイクロLEDや量子ドットデイスプレイも控えている。マイクロLEDはAppleやソニーが密かに開発を進めているという話であるし、量子ドットも各社の研究部門から学会発表が相次いでいる。有機ELで出遅れたのであるなら、先回りしてその先で勝つ戦略を立てる、といったことが日本勢の動きとしてでてくるのか。技術的に優れていても、市場に受け入れられないために消えた、という話は過去を振り返れば、多々あるが、これからの有機ELパネル、そしてさらなる次世代パネル技術がどのような動きを見せていくのかが注目される。

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