台湾の市場調査会社TrendForceは7月5日、Micron Technology Taiwanとして知られる台湾のDRAMメーカーInotera Memoriesにおいて7月1日に事故が発生し、2つのファブのうちの1つが操業停止状態となったことから、控えめに見積もっても2017年7月における全世界のDRAM生産能力が5.5%減少する見通しであること、ならびにDRAMの供給不足に拍車がかかり、価格の上昇がさらに進むことが予想されるとの見解を発表した。

操業停止の要因は窒素ガス供給系の故障

事故が起きたInoteraのファブは、同社が台湾・桃園市に2つ有しているDRAM製造ファブの1つ「Fab2」。現在は稼動を停止しているが、窒素ガス供給システムの故障によりクリーンルーム内のシリコンウェハや製造装置に汚染が生じた模様である。TrendForceのメモリ市場動向部門であるDRAMeXchangeは、Inoteraが工場全体でラインに投入していた12万5000枚のウェハのうち、控えめに見積もっても約6万枚のウェハが被害にあったと推定している。

ちなみにDRAMeXchangeでは、2017年第3四半期の世界におけるDRAMの平均生産能力を113万5000枚/月(300mmウェハ換算)と見積もっており、Inoteraの操業停止に伴い、7月の世界におけるDRAM生産能力は5.5%ほど減少する見通しとしている。

Inoteraは、Fab2の操業を可及的速やかに再開したいとしているが、汚染ウェハを除去し、すべての装置をクリーニングして操業が再開できるまでには相応の時間を要するため、今すぐに、というわけにはいかない。

Inoteraは、MicronグループでLPDDR4製品の製造供給を担当しており、AppleのiPhone向けのサプライチェーンに組み入れられている。このため、今回のファブの稼働停止は、今秋に発売が予定されているiPhoneの新モデルの出荷に何らかの影響を及ぼす可能性もある。また、Inoteraのメモリにはモバイル向けのほかPCやサーバ分野に向けたものも含まれるので、影響は拡大することも考えられる。

なお、DRAMのバイヤおよびサプライヤはともに、Fab2の汚染によって引き起こされた損害の程度を注視しているが、まだ明らかにされてはいない。第3四半期の売買契約に関する交渉は、施設が迅速に操業を再開できるかどうかの不確実性の影響を受ける可能性が高い。 DRAMeXchangeは、長期的なDRAM市場への影響をまだ見通せていないが、今回の動きを機にDRAMの需給はさらにひっ迫し、価格はさらに上昇するとみている。