ついに『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』が7月1日に公開され、週末2日間で興行収入10億4,827万1,900円をマーク! これは『美女と野獣』の初週末2日間の動員を越える、2017年洋画No.1ヒットとなった。そんな本作を手がけたヨアヒム・ローニング監督にインタビューし、ジョニー・デップの魅力をはじめ、驚くべきポール・マッカートニーのキャスティング秘話について聞いた。

ヨアヒム・ローニング監督

本作では、海賊ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)の過去を知る最恐の敵・海の死神サラザール(ハビデル・バルデム)が解き放たれ、壮絶な復讐劇が繰り広げられる。これまでも親子の絆のドラマが織り込まれてきた『パイレーツ』シリーズだが、今回はその極みともいえるエモーショナルな結末が用意され、予想外に涙腺を刺激される。

本作を手がけたのは、第85回アカデミー賞の外国映画賞にノルウェー代表作品としてノミネートされた『コン・ティキ』のヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドリムというノルウェー人監督コンビだ。

本作では、ジャック・スパロウの叔父アンクル・ジャック役で、元ビートルズのポール・マッカートニーがキャスティングされたことでも話題騒然。ヨアヒム・ローニング監督のインタビューで、その驚くべき経緯も明かされた。

――『コン・ティキ』はノルウェー映画史上最高の製作費がかけられ、最大のヒット作となった映画でした。『パイレーツ~』も同じ海洋ものということで、その経験は活かされましたか?

確かに『コン・ティキ』の規模はノルウェー最大だったけど、作品の規模を『パイレーツ~』に換算すると、ケータリング代くらいにしかならないんだ(苦笑)。もちろん、最高の人たちといっしょに作品を作るという意味では変わりない。『コン・ティキ』ではスタッフも少なくて、ポスターも自分で作ったくらいだから。

――アンクル・ジャック役にポール・マッカートニーのキャスティングが決まった時の感想を教えてください。

ポールが「イエス」と言ってくれた時はドキドキしたよ。実はもともとキース・リチャーズ用に書かれた別のシーンがあったのだけど、今回オーストラリアで撮影したから、キースのスケジュールが難しくなってしまったんだ。

――キース・リチャーズはジャック・スパロウの父親キャプテン・ティーグ役。ジャック一族は最強です!

そうだね。ジャックの家系は世界で最もクールな家系ということさ。それでジョニーと話し合って、今回その家系をさらに掘り下げようということで、何人かの名前をリストアップしたんだ。そのいちばん上に名前があったのが、サー・ポール・マッカートニーさ!

――ポール・マッカートニーへ出演交渉をされたのはジョニー・デップだったそうですね。

実はジョニーのスマホにポールの番号が入っていたんだ。だからそのままジョニーがポールにショートメールを送ってくれた。そのやりとりが数日間行われていく中で、そのメッセージの内容が、どんどん海賊がしゃべっているような感じになっていった。それを見たとき、ああ、ポールはきっとやってくれると確信したよ。

――現場でのポールはいかがでしたか?

彼は世界で最もアイコン的なミュージシャンといっても過言ではない。彼はプロフェッショナルだけど、人当たりがすごくいいし、台詞も全部頭に入れてやってきてくれた。リバプールのアクセントの直しはもちろん、衣装を着たり、メイクをしたりと、海賊になることを心から楽しんでくれた。でも、考えてみたら、彼が映画のなかで誰かを演じるのなんて久しぶりだったはず。彼は大いに作品に貢献してくれたよ。

――ジョニーとポールの共演シーンはしびれますね。

もともとスマホに番号があったことからわかるように、ジョニーとポールは以前に仕事をしていて、お互いのことを知っている友人関係だった。でも、ポール・マッカートニーといえば、“ナイト”の称号を得ている人だし、すごく存在感がある。彼と仕事ができるチャンスなんてそうそうないから、特別なことだったとは思う。現場でのポールとジョニーはかなり相性がよく、台詞のやりとりも事前にすり合わせて、とても楽しそうにやっていたよ。

――また、本作は『パイレーツ~』シリーズ始まって以来の感動作になっています。特にどんなことにも動じないジャック・スパロウが、初めて憂いを帯びた表情を見せるシーンが印象的でした。

ジャックは100%ジョニーが作り出した素晴らしいキャラクターだ。ジャックとジョニーは、ほとんど同じ人間じゃないかと思えるような部分もあるし。ただ、普通の主人公は何かを経験して学んでいくけど、ジャックは成長するタイプのキャラクターではないから、実はなかなか難しい部分もあるんだ。

今回5本目を制作するにあたり、彼の違う一面を見せたいと思った。少しだけ、ジャックの薄い皮をむいて見せようとしたんだ。

だから、魔法のコンパスを手放した後、運に恵まれずに戸惑う彼がいるし、最後に予想外の出来事で悲しい表情も見せている。もちろんジャックの「なるようになるさ」という性格が変わることはないけど、ジョニーもジャックの少し違う側面を掘り下げようとしてくれたよ。

■プロフィール
ヨアヒム・ローニング
1972年5月30日生まれ、ノルウェー出身の映画監督。『バンディダス』 (06) 『ナチスが最も恐れた男』(08)、『コン・ティキ』(12)を同郷のエスペン・サンドベリとのコンビで監督。『コン・ティキ』は第85回アカデミー賞や第70回ゴールデングローブ賞の外国映画賞でノルウェー代表としてノミネートされた。

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