SAPジャパンは7月4日、都内でプレスセミナーを開催し、パブリック(公共機関)セクター向けビジネスの戦略について発表した。会見にはSAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏やパブリックセクター向けのビジネスに取り組むにあたり、同1日に新設した公共統括本部の責任者でもあるSAPジャパン バイスプレジデント 公共統括本部 統括本部長の佐藤知成氏などが出席した。

SAPジャパン バイスプレジデント 公共統括本部 統括本部長の佐藤知成氏

パブリックセクター向けの戦略について説明した佐藤氏は「5月に政府は、新たに『デジタルガバメントへの移行による官民データ利活用社会の実現』を制定した。この中で3つの大きな柱として『デジタル技術を徹底活用した利用者中心行政サービス改革』『官民協働を実現するプラットフォーム』『価値を生み出すITガバナンス』を挙げている」と説明。

政府のこれまでの取り組みと今後の方向性の概要

続けて「これらの施策を進めるにあたり、解決すべき課題は経済再生・財政健全化、国民生活の安全・安心の確保などだ。これに対してデジタル・ガバメント推進に向けた今後の取り組みとしては、デジタルファーストやコネクテッド・ワンストップ、ワンスオンリー、民間サービスと連携した行政サービス、BPR(Business Process Re-engineering)の着実な推進と政府全体への展開となる」と、同氏は語った。

公共統括本部は営業、IVE/プリセールス、サービス、開発の計15人でスタートし、順次増員を予定しており、各国における先進的な事例などを集め、より効率的に支援するという。

そこで、ヒト・モノ・ビジネスのデジタル化に対して、SAPがどのように貢献できるのかについて、佐藤氏は「基幹業務はSAP S/4 HANA、労働力のデジタル化にはSuccessFactors、ビジネスネットワークのデジタル化にはSAP Ariba、顧客管理はSAP Hybris、モノはSAP HANA Cloud Platformとなる。これを公共分野に当てはめた場合、働き方改革にはSuccessFactors、業務プロセスの改革にはAriba、顧客管理はHybris、データの有効活用はSAP HANA Cloud Platform、基幹業務にはS/4 HANAが位置付けられる」と、説く。

ヒト・モノ・ビジネスのデジタル化を支援するソリューション

SAP製品を公共分野に当てはめた場合の概要

そして、これらのソリューションを持つSAPが具体的にどのように公共分野のビジネスに取り組むのか。この点に関しては「デザインシンキングの手法を用いる。将来にわたり必要となる最先端のソリューションをデザインシンキングにより、ともに考え、提供していく。考えたことをスピーディにプロトタイピングにより具現化し、デジタル技術をいかに有効に適合させるかだけでなく、具体的に展開・実装していく。また、ただデザインシンキングを回すだけでなく、すでにわれわれは諸外国の多様な分野で実証された実績を有しており、これらの知見をコンポーネントとして組み合わせることで、迅速かつ低コストで提供できるのではないか」と、同氏は述べた。

デザインシンキングの概要

サンフランシスコで訪日観光客向け施策の提言

手始めに同社では、2020年に日本が訪日外国人旅行者数4000万人達成に向けたアクションを支援するため、9月12~14日の期間でサンフランシスコ日本国総領事館主催の「Design Thinking×Japan ~Re-imagine Japan tourism」と題したイベントに参加する。

このイベントに関して佐藤氏は「グローバルの30カ国160人超のSAPのヤングタレント(優秀人材)を集め、訪日外国人観光客が継続的に日本を訪れたくなる仕組みを検討する。また、観光業のみならず、社会インフラ全般に対する施策の検討により日本経済に新たなイノベーションを起こす第1弾の取り組みとなる」と、期待を寄せていた。

「Design Thinking×Japan ~Re-imagine Japan tourism~」の概要

一方、内田氏は「3月にドイツのハノーバーで開催された『CeBIT 2017』において、日本とドイツが連携を強化し、第4次産業革命を推進していくハノーバー宣言(第4次産業革命)を採択した。一環として、われわれはデジタルガバメントに取り組む。イノベーションの方法論としては、デザインシンキングをベースに日本の顧客を支援することを行い、デジタルガバメントを本格的に推進していく」と話した。

SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏