地元が願う極めて高い成長の絵柄

2つ目の心配は、「地元が舞い上がりすぎているのではないか」ということだ。先述したように、国は今回の民営化における事業者の注力範囲が新千歳だけに集中することがないよう、釘を刺してきた。その典型が、「事業提案は7空港全てについて、それぞれの空港活性化策を提案すること」とするガイドラインで、1月から次々と実施された7空港現地視察&シンポジウムでも何度も語られた。

新千歳だけではなく、事業提案は7空港全てについての活性化策が求められている

この一連のシンポジウムには各回100社以上が参加して活況を呈したが、他方、道外からの参加者に大手旅行会社(北海道支社)のパッケージツアー購入を義務付けたり、応募企業が全部のシンポジウムに皆勤したかどうかで評点に差がつけることがあると発言して参加者の不評を買ったりと、売り手市場であることを意識した応募者への要求的な対応が見られた。

正しく評価できる審査体制の整備を

これが、地方空港や自治体サイドにどう影響したかというと、「民営化されれば中小空港でも大きく需要を伸ばすことができるんだ」というバラ色の期待が高まり、各市が描く未来図はこれまでのトレンドや制約要件を飛び越えた、極めて高い成長の絵柄が示されることとなった。応募する側からすれば地元の希望は分かるが、北海道の基礎民力の限界を見ない目標値は非現実的であるし、全ての道内空港に国際線を誘致できるわけもない。現実の裏付けの乏しい夢のような計画を書かなければいけないのか、と頭を抱えている企業は少なくないだろう。

地元が期待感で盛り上がる一方、事業者にすれば冷静に観光ポテンシャルの優劣を分析した上で、メリハリの利いた活性化計画を作る必要がある。今の段階では、要求水準をむやみに高くするよりも、リアリティーのある段階的な運営計画でも、きちんと評価できるような審査体制を整えることが重要であると言える。

その意味では、道内各市町村・空港は「現在の地方資源がいかに成長ポテンシャルを持っているか」を主張するだけでなく、これまでの反省を踏まえ、今後新運営権者とともにどのように汗をかき、苦労するかという自己責任を踏まえた目標設定をすべきである。

財政状態が厳しい中での議会対応を考えると、自治体支援を安請け合いはできないという環境にあることは分かる。他力本願の事業者・エアライン・旅行客誘致を要求するだけでは、決して中期的に実効性のある空港運営を構築することも、それと共存することもできないと認識すべきだろう。地方自治体に対する国からの的確な指導も求められる。