プライムストラテジーは、企業向けにWordPressを用いたサイト構築を提供するITベンダーだ。Webサイトの高速化やコスト削減を実現するための実行環境として「超高速WordPress仮想マシン KUSANAGI」を提供するなど、より高速で高クオリティなサイト構築・運営を求めるユーザーの要求に応えている。

加えて、企業向けにさまざまなパブリッククラウドの導入支援も行っており、合計15社のサービスを常時利用している。同社自身も社内にサーバを置いておらず、さくらインターネットのデータセンターでオンプレミスサーバとプライベートクラウドを構築し、Microsoft Azureと組み合わせたハイブリッドクラウド環境で業務を行っている。

「約1年前に本社を移転した時、社内からサーバをなくしました。回線環境がよくなったことで、データセンターとVPNで接続して業務を行うという使い方が現実的になったからこその変化です。そして、データセンターの利用は転送量などに影響されない定額制なので、ファイルサーバのように容量がどんどん増えて行く用途にも気軽に使えます。一方、保守を重視するようなシステムはパブリッククラウドへと振り分けています」と語るのは、代表取締役の中村けん牛氏だ。

プライムストラテジー 代表取締役 中村けん牛氏

新規顧客90%がクラウドを選択 - 加速するクラウド化

プライムストラテジー自身は、技術の企業としてサーバ運用の場を手元に残しておきたいという意識もあり、データセンターを利用したオンプレミス環境やプライベートクラウド構築などは今後も行っていくという。

「インフラ環境を完全に手放してしまうと、エンジニアの技術力が低下してしまいそうですし、コストを意識することなくクラウドを使ってしまうという問題も考えられます。コスト意識を持ちながらインフラを使っていくためにも、自社運用は残しておきたいですね」と中村氏。

しかし、ユーザー企業とのコミュニケーションの中では、クラウド利用へ強く傾いていることを感じるという。同社の顧客も、新規は90%以上がパブリッククラウド環境での運用を希望している。

「クラウドへの流れは本格的になっており、止まるものではありません。以前はセキュリティの面で外部にデータを出したくないといった風潮もありましたが、今や逆転して、社内に置いておくほうが不安と言われるようになりました。価格などの折り合いがつけば、すべてをクラウドに移したいという企業も多いでしょう。今は過渡期ですね」と中村氏は指摘する。

かつては、セキュリティがクラウド導入の最大の障壁とされていたが、それが技術的にも心理的にも解決された今、課題となっているのはコストだ。パブリッククラウドは短期間で利用をスタートでき、事前投資や運用などが不要であることから初期費用が安いとされているが、運用コストに目を向けると問題が出てくることがある。

「初期費用は確かに安いですし、小規模な利用ならば運用コストを含めても安く済みます。しかし、使っていくうちに利用人数やデータが増えると、高くなっていく。しかし、クラウドベンダーも価格を下げたり、同じ料金でもデータ容量を増やしたりと、コストパフォーマンスが向上してきているので、今後はより使いやすくなるはずです」と中村氏。

最近は、クラウドからオンプレミス環境に回帰する流れもあるというが、それはクラウド環境では思っていたほどのパフォーマンスが発揮されず、自由度も低く、使ううちにコストが見積もりよりも高くなっていったせいだろうとも指摘する。

この辺りも、現在はクラウドベンダーが対策を打ち出していることから、いずれは解決されるのではないだろうか。こうした課題の解決により、クラウドへのシフトがより強まることが予想される。

プライムストラテジーのネットワーク構成図

ユーザーの意向と決定権者で変化するクラウド選択

では、すでにクラウドを利用中の企業はどのサービスを選んでいるのだろうか。多くのユーザーと触れ合う中で見えてくるのは、クラウドの使い方と決定権者による選択の違いだという。

「移管先が社内システム、決定権者が経営層やエグゼクティブである時は、Microsoft Azureが選ばれるケースが多いです。スタートアップ企業や開発メインの企業でサービス提供の場を求めている時はAWSが第一の選択肢となっています」と中村氏はユーザーの選択傾向を語る。

「個人事業主やフリーのエンジニアなら、さくらインターネットやGMO、日本ブランドであることを重視する企業は携帯キャリア系やNTTを選択する場合が多いようです。安さを重視しつつも先端のものが使いたいという場合がGoogle Cloud Platformですね」とも教えてくれた。

こうした事実からは、企業がパブリッククラウドを選択する際に、価格や機能という面だけでなく、企業の意識とマッチするサービスを提供できるかどうかなども判断材料にしていることが見えてくる。Microsoft Azureについては特にユーザーからの信頼性が高まっていることを感じるという。