2017年6月28日から30日まで、東京ビッグサイトにてAIや人工知能に関する技術が一堂に会した「AI・人工知能EXPO」が開催された。囲碁や将棋の世界において人間のトッププロを打ち負かす姿が報道されるなか、「人工知能」についての注目度は俄然高まっている。そんな世相を反映するかのように、開催期間中数多くの来場者で賑わっていた。

技術革新の流れを受け、AIが格段の進歩を遂げ注目を集めているだけあり、多数の来場者で賑わいを見せた「AI・人工知能EXPO」。自社のビジネスに人工知能がどのようなメリットをもたらしてくれるのか模索する姿が見受けられた

100を超える企業が参加した「AI・人工知能EXPO」の会場で多くの来場者を集めていたNTTドコモのブースでは、先日6月23日に報道発表された「ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブ」の一端を見ることができた。「先読みエンジン」や「多目的対話エンジン」、「IoTアクセス制御エンジン」の3つのエンジンより構成されるオープンAIエージェント基盤「SEBASTIEN(開発コードネーム)」がそれで、多数の来場者を惹き付けていた。

このAI基盤を活用することによって、IoT技術と組み合わせれば他社でも取り組みが盛んなスマートスピーカーのようなサービス・ソリューションはもちろん、18億回以上の利用実績がある「しゃべってコンシェル」等で培った自然言語処理技術等を自社のサービスに取り入れることも可能となるだけに熱い視線を集めていた。ちなみに、「AI・人工知能EXPO」初日となった6月28日より、開発者向けに先行登録の受付を開始しているので、興味のある企業あるいは技術者の方はチェックしてみてはいかがだろうか。

かねてよりNTTドコモはエージェント機能の技術開発を行っており「しゃべってコンシェル」を提供してきた背景がある。今回、それらNTTドコモが育んできたAIエージェントAPIをオープン化し、ともに創造していくパートナー企業を広く募るという

こちらが、開発コードネーム「SEBASTIEN」の開発者向け先行登録Webサイト

NTTドコモブースでは、「SEBASTIEN」以外にも画像認識エンジンを活用した「商品棚画像認識」ソリューションなどを展示していたが、筆者が興味を惹かれたのは対話によって世の奥様方が抱える悩みを解決へと導いてくれる「献立チャットボット」だ。

AIを用いたチャットボットを容易に構築することができるというNTTドコモの「チャットボット自動生成技術」による「献立チャットボット」

この「献立チャットボット」、例えば「にんじん」や「ジャガイモ」、「豚バラ」のように材料からでも、「中華」や「和食」といったジャンルからでも献立を提案してくれるというもの。例えば「和食」が食べたい気分であればチャットボットに「和食」と入力。「鶏肉はありますか?」「卵はありますか?」と投げかけられた質問に「はい」「いいえ」で答えていく一問一答を経て「親子丼はいかがでしょう? 詳しいレシピはこちらです」のように献立を提案してくれるのだ。

ユーザーにとってみれば、対話を進めるかたちで「献立」という悩みを解消してくれる手軽さが魅力なわけだが、コンテンツ提供者にとっても手軽さが魅力なのだという。質問と回答のペアをある数量用意するとともに、システムから自動生成された真理表をメンテナンスするだけでよいのだそう。デモンストレーションでは「献立」にフォーカスされたチャットボットだったが、例えば「旅先選び」でもこのソリューションは活用できるのではないだろうか。

「先読み」「多目的対話」「IoTアクセス制御」3つからなるエンジンが利活用できる「AIエージェントAPI」のオープン化に踏み切ったNTTドコモ。次回の「AI・人工知能EXPO」では、パートナー企業によるNTTドコモの技術を余すところなく利用したソリューションが展示されるかもしれない。今後もNTTドコモのオープンAIエージェント基盤「SEBASTIEN」の動向には注目しておく必要があるだろう。