プロジェクト始動後、最初に行われたのは浜島社長に対するオーナーインタビューだ。これは変革目的を明確化するためのもので、詳細なインタビューの中からは既存事業の競争力や基盤を強化しつつ、新技術や新事業を開発・開拓し、将来の事業の柱として成長させたいというビジネス面での目標と、その新事業を創出できるイノベーティブな組織であるために、従業員が新しいことにチャレンジし、一人ひとりが能力を発揮できる組織風土を作りたいという組織面での目標が出てきた。

オーナーインタビューサマリ

「その目標を達成するためには何が必要なのか、どうしたら実現できるのかといった、実際の施策に注目して項目を細分化した戦略マップの作成を行ったのが2015年7月のことです。最初は12名のプロジェクトメンバーで戦略マップを作成し、その後エバンジェリストによる施策アイデア追加を経て働き方の取り組みテーマごとに分科会を発足させました」と宮地氏。

戦略マップ

この時作成された戦略マップは、現在もさまざまな活動を行う中で立ち返る原点になっているという。

「長い取り組みの中、1つひとつの部分的な手段が目的化してしまうことがあります。たとえば会議のやり方を変えようという取り組みをしているうちに、会議のやり方を変えるのが働き方改革だというような誤解が生じるわけです。そうならないよう、全体を見て今どこに手をつけてるのか、何のためにやっているのかをはっきりさせる必要があります。これを戦略マップという形でバイブルにしようと助言しました」と語るのは、内田洋行 執行役員 知的生産性研究所 所長の平山信彦氏だ。

プロジェクトオーナーを社長とし、事務局としてのPMOの設置、各施策の実行部隊として現場の社員が参加する分科会や、分科会を支援する執行役員を中心としたアドバイザーというプロジェクト体制を整え、着実に進めるという方法も助言。さらに現場から積もった大量のアイデアを分類・整理し、重要度や優先度による重み付けなども内田洋行側がアドバイスを行った。

働き改革の推移

「プロジェクトメンバーで2度施策アイデアを募った後、エバンジェリストによる施策アイデア追加を行った結果、アイデア自体は合計およそ1700個も出ました。これを内容的に似たものを統合するなど整理した上で、働き方に関するものと働く場に関するものに分け、さらに細かなグルーピングを実施。初年度に取り組むべき施策として96個に絞り込みました」と平山氏は語る。

具体的な手法や分類は内田洋行知的生産性研究所のアドバイスを受けながらも、実際にアイデアを出したり、分科会に参加したりしているのは社員たちだ。

「最初の12名は本社・営業各部門の若手からベテランまで万遍なく集めましたが、その後は社内説明会などで参加希望者を募りました。一部、この業務にはこの人にぜひ関わってほしいという人に関しては推薦がありましたが、ほとんどは自主的な参加です。現在でも追加参加は受け付けていて、多くの社員が分科会活動に参加しています」と、ウシオ電機 法務部の西畑佐智子氏は語る。

今回お話を伺ったプロジェクトのメンバー。左から法務部 西畑佐智子氏、 経理財務部 経理担当部長 瀧澤秀明氏(奥)、法務部 宮地加根子氏(手前)、内田洋行 執行役員 知的生産性研究所 所長 平山信彦氏