【レポート】

「食パン」の名前の由来は? 食パン発祥店の人に聞いてきた

読者から「食パンの名前の由来はなんですか?」という質問がマイナビニュース編集部のもとに届いた。これまで、「どうしてゼリーは容器パンパンに液が入っているのか?」「ビールのペットボトルがないのはなぜ?」という、読者からの疑問を鮮やかに解決してきた筆者からするとこんな質問はイージーだ。

詰まるところ、あんが入っているパンだからあんパン、カレーが入っているパンだからカレーパンだろう。だから食パンは……。

………………?

……………………ムシャリ。

ということで、専門家に聞いてみよう。今回は、元町・中華街にある「ウチキパン」(神奈川県横浜市)に行ってきた。ちなみにこの写真は、通行人にお願いしたら2回断られ、あまりに可哀想だという理由で、近くで見ていたおじ様に撮ってもらった。

「ウチキパン」(神奈川県横浜市)

同店は明治21(1888)年、元町にて「横浜ベーカリー宇千喜商店」として創業し、日本の元祖食パンの店と呼ばれているそうだ。今回話を聞いてきたのは、工場長・打木豊さん。朝はご飯派でもパン派でもなく、あんまり食べることがないらしい。

食パンの由来は諸説あるようです

福田: 「今日はよろしくお願いいたします」


打木さん: 「こちらこそよろしくお願いします」


福田: 「読者から『食パンの名前の由来』について質問があったのですが、まったく分かりませんでした」


打木さん: 「そうですか(笑)。確かに食パンの由来というのは諸説あるので、これだ! という答えがないのは事実です」


福田: 「そうですか。それでは、今回のインタビューはこれにて……」


打木さん: 待ってください。諸説ある中でも、私が伝え聞いているのは……」


福田: "主食"用パン……? パンっていうのはもともと主食じゃないんですか?」


打木さん: 「それは、日本にパンが入ってきたころの話になるのですが、当時はパンを作るイースト菌もなかったんですよ。それぞれの店が独自に酵母を作ってパンを焼いていたんです」


福田: 「イースト菌以外でもパンって焼けるんだ。それで、主食用じゃないパンもあったと」


打木さん: 「お酒の麹菌を使っていたものがあったんですけど、これはあまり醗酵しなくて、大きいパンができなかったんですよ。それが当時の菓子パンです」


福田: 「なるほど」


打木さん: 「『ウチキパン』の前身である『横浜ベーカリー宇千喜商店』では、ビールのホップ種を使ったパンを作っていました。こちらは麹菌と違って大きく膨らむんです。そのパンは、菓子ではなく主食だとされたことで、主食用のパンから食パンになったと伝えられてますね」


福田: 「もうこれが答えじゃないんですか!?」


打木さん: 「確かな資料というのがないんです。ちなみに、ほかには……」


福田: 「パンって食べる以外に用途があったんですね」


打木さん: 「昔は美術のデッサンとかで、パンは消す役目を担ってました。それと区別して、こちらは"食べられるパン"として食パンと呼んでいたそうです」


福田: 「それだと食べられるパン全部ってことになりません?」


打木さん: 「まあそうなりますね(笑)。フライパンとか食べられないパンと区別するために食パンと呼んだ、っていう説もあります」


福田: 「それも説に入るのか……」


打木さん: 「関東大震災や空襲などで焼けてしまって、しっかりとした資料が残っていないんですよ」


福田: 「歴史の長さを感じますね……」


1960年前後の「ウチキパン」の写真。昔の写真はかなり貴重だそうだ

日本で始めて食パンを販売していた「ウチキパン」


福田: 「ちなみに、こちらが日本の食パンの元祖とのことですが、本当なのですか?」


打木さん: 「はい。日本の食パンの元祖は、文久2(1862)年に来日したロバートクラークさんという人の『ヨコハマベーカリー』です。その『ヨコハマベーカリー』で修行していたのが、『横浜ベーカリー宇千喜商店』の創業者となる打木彦太郎でした」


「ウチキパン」店内は多くの人でにぎわっていた

福田: 「先ほど、『横浜ベーカリー宇千喜商店』が販売していたのは、ビールのホップ種を使ったパンと聞きましたが、これは『ヨコハマベーカリー』で学んだことだったんですね」


打木さん: 「そうです! イースト菌がなかった当時は、パンを作る酵母こそが企業秘密だったので、打木彦太郎は10年ほど修行して信頼を勝ち取り、その秘伝のレシピを受け継ぐことになりました」


福田: 「そういうことだったのか。日本で初めて食パンを作っていた『ヨコハマベーカリー』を受け継ぐ『横浜ベーカリー宇千喜商店』。それが、食パンの元祖といわれる所以ですね」


打木さん: 「今の『ウチキパン』では、ほとんどのパンがイースト菌で作られていますが、当時のビールのホップ種を使った食パンも販売しています。それが『イングランド』(税込360円)です!」


『イングランド』(税込360円)

福田: 「これが元祖食パン!! そういえば、食パンの由来は聞けたのですが、食パンに定義ってあるんですか?」


ぱっと見、大きな違いは見られなかったが、普段食べているものより柔らかく、しっとりしている気がする

打木さん: 「ええ~!? なんだろう。基本的には材料が少なく、食パン型に入れて焼いたパンですかね」


福田: 「めちゃくちゃシンプルなパンってことですか」


打木さん: 「いや、最もシンプルなのはフランスパンでしょう。そうですね、食パンは甘さも塩気も控えめで、ほかのものを食べるときに邪魔しない『食事に合わせるためパン』でしょうか」


福田: 「あっ、食事用のパン! そうか。菓子としてではなく、主食としても食事としても食べられる。それが食パンってことですね!」


打木さん: 「そういうことになりますね」


福田: 「これで謎が解けた気がします。本日はどうもありがとうございました!」



食パンの名前の由来はなんなのか。打木さんから聞いたその答えは、諸説あって完全な正解を出すことはできないということだ。しかし、インタビューを通してお菓子ではなく、食事用のパンというのが由来なのではないか、と筆者は考えている。

今回行った「ウチキパン」は、現在も食パンの元祖である「イングランド」(税込360円)を販売しているので、これはぜひ試してみてほしい。ちなみに「イングランド」は、各日数量限定。夕方ぐらいにはなくなってしまうこともあるので、注意が必要だ。

「イングランド」と通常の食パンの食べ比べも面白い

●information
ウチキパン
住所: 神奈川県横浜市中区元町1-50
営業時間: 9時~19時
定休日: 月曜日

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