【レポート】

聖地巡礼地とファンの交流、災害を通した絆とは - 『ハイキュー!!』岩泉一選手誕生会レポート

1 過疎化に悩む町と大ヒット漫画の不思議な繋がり

まえがみポメ
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岩手県下閉伊郡岩泉町にある「道の駅いわいずみ」にて6月10日、「岩泉一選手の誕生日を祝う会」が開催された。同イベントは、少年漫画『ハイキュー!!』に登場するキャラクター「岩泉一(いわいずみはじめ)」(以下岩泉一、一部、岩ちゃんと表記)の名前が町名に由来することから、この地を訪れる同作品のファンに感謝する催し。2,000万部を超える大ヒット漫画のファンと、岩手県の山あいの町との不思議な繋がりとはいったいどういうものなのだろうか。

熱心な同作のファンと地元の人々との集合写真。一見、不思議な組み合わせだが、共通するある思いがあった

最初は何がなんだかわからなかった!? 岩泉町とファンの交流のこれまで

『ハイキュー!!』は高校バレーをテーマにした『週刊少年ジャンプ』(集英社)の連載作品。作品の舞台は宮城県を中心に描かれているが、著者の古舘春一氏が岩手県出身であることから場所やキャラクター名の多くに岩手県の土地や地名が登場する。岩泉一は主人公が所属する烏野高校のライバル校となる青葉城西高校男子バレー部の副主将であり、3年エース(ウィングスパイカー)で、岩泉一を「岩ちゃん」と呼ぶ幼なじみの主将兼セッターの及川徹(おいかわとおる)とともに、烏野高校と激戦を繰り広げた。

一方、名前の由来ともなった岩泉町は、JR盛岡駅から車やバスで2時間ほどと、お世辞にも便利とは言えない場所に位置する北上山地の1,000m級の山々と反対側を海に囲まれた町。東西51km、南北41kmにわたる「本州一面積が広い町」で、明治から続く村が合併を繰り返し昭和31年に岩泉町となった。主な産業は畜産、農業などの農林水産業。東京都23区よりも広い面積に1万人が暮らすという、日本の各地域同様に過疎化、人口減少に悩む町でもある。

廃線となったJR東日本の岩泉線、岩泉駅舎

道の駅いわいずみ外観

コミックやアニメを使った街おこしは珍しいものではないが、岩泉町の場合は自然発生的に、数年前からファンとの交流が始まった。今回の誕生会を主催した道の駅いわいずみ・店長の茂木和人さんによると「最初はお客さんから教えてもらった」のだという。同店は岩泉産業開発が運営する道の駅で、町内の作物や特産品を販売する、いわば町の玄関口のような場所の一つだ。そこにいわゆる"聖地巡礼"で訪れる若い客と交流する中で、『ハイキュー!!』や岩泉一のことを知ったのだという。

茂木さんは、「最初は昨年5月に作者の古舘先生の関係者の方から岩泉一選手・及川徹選手のタペストリーをいただいて、飾りだしたことがきっかけでした。作品のことは知らなかったのですが、お客さんから作品の話を聞くことも増えてきて、キャラクターの名前の由来だからというだけで遠くからここまで来てくれるなんてこともあるんだと、うれしく思うとともに驚きました。せっかくだからとタペストリーの脇に自撮り棒と思い出ノートも置くようになりました」と振り返る。

反応は好評で、ノートは聖地巡礼したファンのイラストやメッセージで埋まっていった。またSNS上にタペストリーとの記念写真をアップし、同店公式Facebook上の投稿にも反応してくれるお客さんも増えていったという。茂木さんはこんな繋がりを生み出す『ハイキュー!!』という作品の魅力をもっと知りたいと、同作を読み込み、県内の他の聖地とも関わるようになっていった。町内の人たちも、作品のことを知って好きになる人が増えていったという。そんな中、2016年8月30日。岩泉町に観測史上初の台風が上陸することになる。

タペストリーとともに道の駅に設置された「いわいずみの思い出ノート」。ファンが思い思いにメッセージを記している

「2016年8月30日」のメッセージ。これが記された後、台風が町を襲う。道の駅は氾濫した泥に埋まることになる

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インデックス

目次
(1) 過疎化に悩む町と大ヒット漫画の不思議な繋がり
(2) 泥に沈んだ聖地
(3) ささやかでも、お礼がしたい
(4) ファンと地元の人々をつなぐ思い
(5) ミニ岩ちゃんによるケーキ入刀

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