価格と性能のバランスで人気の超望遠レンズで「レッドブル エアレース ワールドチャンピオンシップ 千葉2017」決勝戦を撮影する連続企画。前回の「SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary」に続き、今回はその存在感が写欲を刺激する「TAMRON SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2」でのレビューと作例をお届けする。

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元祖「手持ちで撮れる600mmズーム」の進化版

前回同様、まずはレンズの概略から。2013年12月、タムロンが他社に先駆けて発売した、手持ちで撮れる600mmズーム「TAMRON SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2」。その2代目として昨年(2016年)9月に登場したのが「TAMRON SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 (モデルA022)」だ。店頭実勢価格は13万円前後(2017年6月現在。筆者調べ)。標準ズームから次のステップへ、というユーザーにはやや躊躇する価格帯だが、テレ端600mmという焦点距離を考慮すれば、むしろお買い得以外の言葉が見つからない(これだから趣味の世界は恐ろしい)。

外観からして本格派。ただし、テレ端600mmの望遠ズームとしては小型軽量。レンズ構成は13群21枚

タムロンいわく、旧モデルとの差異は「光学性能の向上、AFの高速化、手ブレ補正効果の強化、防汚コートの採用、フレックスズームロック機構や専用テレコンバーターの開発など」。ちなみに、レンズ鏡筒の可動部、接合部の各所は防滴用のシーリングを配した簡易防滴構造を採用している。

ズームリングを前にスライドさせることで任意のズーム位置で瞬時にロックできるフレックスズームロック機構を搭載。白帯が見えているときはロック状態

携帯時に便利なレンズロック機構。撮影距離の指標は窓に表示される。最短撮影距離は220cm

レンズの全長・重量は対応マウント別に異なる。キヤノン用は260.2mm・2,010g、ニコン用は257.7mm・1,990g、ソニー用は259.7mm・1,955g。フィルター径はφ95mm。約2kgの重量は、丸1日の手持ち撮影には相当難儀にも思えるが、実際は慣れと情熱でクリアできるレベル。三脚座を使わないなら外してしまえば、ある程度は軽量化できる。

むしろ肝心なのは、カメラ本体とのバランスだろう。軽量なカメラより、そこそこの大きさと重量感があるカメラ本体と組み合わせたほうが、レンズ重量を左腕ですべて引き受けずに済む。当然、ピントやズームリングもより操作しやすくなる。

600mm位置までズームした状態。直進機構はなく、直進で引き出す操作は推奨されない

三脚座は簡単に回転・取り外し可能

ズームリング(前)には適度なトルク、ピントリング(後)には合わせやすい軽快さがある

マウント基部はカメラとの接続にガタつきを感じる。改善を望みたい

今回は、カメラ本体にフルサイズ機(ニコン D610)をチョイス。最大600mmとレンズの焦点距離が長いので、そのぶん画質に余裕を持たせたいという狙いもあったが、前回も書いた通り、ことレッドブル エアレース千葉で使用するには(特にプレスエリアからの撮影において)、600mmではやや不足気味だった。そこで今回は、あえて少々トリミングした作例も掲載。トリミングしたとはいえ、長辺は約5,000ピクセル以上あるので解像度は十分。高画質なフルサイズ機であれば、こうして(見た目上の)焦点距離を稼ぐことも可能だ。

カメラに装着して構えた状態。大型フードは標準で付属

1/640秒 f/10 600mm ISO250(トリミング)
自衛隊のアパッチロングボウもエキシビジョンに登場

1/800秒 f/10 300mm ISO250(トリミング)
地元千葉市消防局のレスキューヘリ「おおとり」。当日は2機で飛来、水難救助のデモンストレーションをおこなった