DMやパッケージの印刷事業を手がけるウイル・コーポレーションは6月15日、「アジア初、最速デジタル印刷機が切り拓くデータドリブンマーケティングの最前線」をテーマに、HP社製高速インクジェット輪転機を披露するオープンハウスを開催した。本稿では、ウイル・コーポレーション北國工場(石川県白山市)で実際に稼働する輪転機の実力と、説明会で語られたデジタル印刷がもたらす変化について紹介する。

ウイル・コーポレーション北國工場

アジア初導入の高速インクジェット輪転機

同オープンハウスでは、ウイル・コーポレーション北國工場で稼働している、アジア初導入の高速インクジェット輪転機「HP PageWide Web Press T490HD」が披露された。デジタル印刷は従来の印刷方式とは異なり、版の交換などが不要なためフレキシブルでスピーディな印刷が可能だ。パーソナライズ化されたDMのバリアブル印刷などで、その活躍が期待される。

HP PageWide Web Press T490HD

本機の正面向かって右側には紙の巻き出しユニットが備わっており、ここから紙のロールを吸い上げて印刷を始める。2本の紙のロールが用意されているので、1本の紙ロールがなくなってももう1本に切り替えて機械を止めずに印刷を続けることができる。

紙の巻き出しユニット

巻き出された紙は、まず大きな1つめのアーチ状の装置である第1エンジンに移り、必要に応じて前処理を実施。定着材とCMYKのインクを塗布する。その後、反転機を通り、第2エンジンへ移行。第1エンジンで印刷した面の裏側を第2エンジンで印刷する。

印刷スピードは最大で305m/分。32ページの冊子であれば1分あたり125部、1時間で約7500部印刷できるという。

本機のエンジン

第1エンジンと第2エンジンの間にある反転機

印刷が終わると、シームレスにそのまま自動製本システム「シグマライン」へ接続される。ここで裁断・製本化が自動で行われ、本の状態でラインから出てくるようになっている。1折ごとにミシン目などを入れられるので、高品質な製本を担保できるとのことだ。

シグマラインへ紙が流れてくる様子。手前の青い機器からシグマライン

製本された状態で出てくる

マーケティングにも使えるデジタル印刷パッケージ

同工場内にあるサンプルコーナーでは、高速デジタル印刷機で制作されたパッケージやインクジェット輪転機で作られたDMなどが展示されていた。

ロッテのキシリトールガム20周年を記念するキャンペーンパッケージは、異なるデザインを自動で生成できる「HP Mosaicソリューション」を使って印刷されたもの。フィギュアスケーター・羽生結弦さんや女優・小松菜奈さんといった20代で活躍している著名人にデザイン制作の協力を依頼し、それぞれが制作したデザインをもとに200万種類以上のパターンを自動で生成。1つたりとも同じデザインがないパッケージを実現できたという。

ほかにもマーケティング戦略の1つとして、同様のバリアブル手法を使った事例が紹介されていた。また、DMやカタログだけではなく、絵本などでもパーソナライズ化の取り組みが行われている。

200万種類以上のデザインパッケージを実現したロッテガムの事例

「HP Mosaicソリューション」を使ったバリアブル手法のパッケージ

主人公の名前を変えられるパーソナライズ絵本