ステレオカメラで優位性を発揮できる理由

運転するとき、人間は情報の90%を目に頼っている―。そう考えたスバルの技術者たちが、クルマの運転支援や自動運転も、複眼のカメラであるべきという原理原則、根本を貫き通した28年の成果が、アイサイトのツーリングアシストにしっかり反映されているのである。

今回のツーリングアシストでも、カラー画像で認識と解析をするので、車線だけでなく、前のクルマへの追従も可能になっている。そして、車線を優先するのか、前のクルマへの追従を優先するのかといった判断も、ステレオカメラでの画像認識があるからこそ、間違いなく選ぶことができる。

ステレオカメラであれば、人間の眼のように先の先まで見通すことができる

さらに、ツーリングアシストとなって進化した点として注目したいのは、加減速したり、ハンドル操作を始めたりするときの様子が非常に自然であることだ。わざと車線逸脱をさせてみようとハンドルを切ってみると、素早く車線中央へ戻さなければならないため、かなり力強く電動パワーステアリングを機能させるのだが、ステアリング修正の動作が急すぎないため、車体が横へ揺すられることなく、滑らかに車線中央へ戻されていく。

車線中央を維持する走行では、運転席からの目線でも中央にいる実感があり、たとえば日産自動車「セレナ」のプロパイロットで、若干ズレているように感じてしまったのとは差を感じた。これは良し悪しというよりも、アイサイトが積み上げてきた成熟度の高さを、ツーリングアシストでは一層実感できたということである。

車線の中央をキープする能力も高いアイサイト

自動運転への道も? アイサイトの今後

ここで今後の展開を考えてみたい。当初のステレオカメラ開発で、人間が情報の90%を目に頼っているとスバルの技術者は述べていたが、残りの10%を捉えなければ、自動運転にはつながっていかないわけである。ツーリングアシストの技術者も、ステレオカメラのみにこだわっているわけではないと話す。

またスバルは、自動運転を目指してはおらず、目指すのは究極の安全であり、事故ゼロであると言うが、それが結果的に自動運転への道筋にもなっていくのだろう。

アイサイトを進化させたスバルは今回、北海道の美深試験場に、高速道路のカーブ/高速道路の分合流/市街地を想定した交差点/アメリカのフリーウェイを模した路面を新設したと発表した。自動運転に着実に前進する構えがそこからもうかがえる。

スバル研究実験センター美深試験場のテストコースを改修し、運転支援技術の高度化に活用

その上で、スバルが現在、後追いの形となっているクルマの電動化を進め、電気自動車(EV)を実用化すれば、アイサイトの進化は、まさに究極の域に達することができるのではないかと想像する。