旅の目的はさまざまだ。美味しいものを食べたり、温泉にゆっくりつかったり、名所や旧跡を巡ったり……。でも、どんな旅でも大事なのは拠点となる宿。今回は、愛媛県宇和島市にある「木屋旅館」を紹介する。モダンにリノベーションされた日本旅館を1棟丸ごと使える、贅沢ながらコスパ抜群の宿泊施設なのだ。

愛媛県「木屋旅館」で癒やしの滞在を

作家や政治家も愛した木屋旅館

木屋旅館がある愛媛県宇和島市が位置するのは、農水産業が盛んな南予地方。四国地方と九州地方を隔てる豊後水道を臨み、柑橘を育む段々畑には海風が吹き抜ける。市の中心部にある丘陵には宇和島城もあり、旅館からもほど近い。

段々畑と海を臨む南予地方

木屋旅館まではJR「宇和島」駅から徒歩15分ほど。車を使うなら、松山から四国横断自動車道を経由して約1時間だ。筆者の手持ちのレンズでは収まりきらないほどの堂々たる外観は、明治44年(1911)創業という歴史の風格を感じる木造2階建て。「KIYA RYOKAN」と染め抜いた紺色ののれんがモダンな雰囲気である。

木屋旅館の外観。歴史の風格とモダンで洗練された雰囲気が同居する

創業以来、作家の司馬遼太郎や吉村昭、政治家の犬養毅など多くの人物に愛されてきたが、1995年に惜しまれつつ廃業。2012年春に内装をリノベーションし、再生オープンを果たした。

利用は貸し切りのみ!

引き戸を開けて中に入ると、広々としたロビーには日差しがふんだんに差し込んでいた。白塗りの壁と深い色の木材が落ち着くコントラストだ。

宿の中心となるロビー

2階建てなのに天井からも光が差し込んでいる。不思議に思って見上げると、2階の床が透明になっていて驚いた。2階の一部の部屋は床面がアクリルでできており、互いに透けて見えるようになっているのだ。

ロビーの真上の部屋は、床が全面透明なアクリルでできている。透けすぎだろうこれは……

この部屋には筆者が泊まることになった。これは翌朝の様子

木屋旅館の利用は1棟貸しのみ。つまり、何人での利用であっても旅館を丸ごと貸し切って使う形となる。施設利用料は、1泊につき2万1,600円+1人5,400円。2人から10人まで宿泊可能で、10人で泊まれば1人あたりの宿泊料は7,560円とリーズナブル。11人以上の宿泊にも相談に応じる。

1階には庭もあり、廊下で一休みしながら季節の植物を眺められる