吉沢亮は「歩く彫刻の森美術館」

――堂本剛さんも意外なキャスティングでした。

よくOKしてくれましたよね。堂本さんも普通主役じゃないとやらないんでしょうけど、福田監督の初めてのメジャータイトルだから、協力しないわけにはいかないと思ってくださったんだと思います。今回紅桜のエピソードを盛り込んだのは、銀時の話にしたいという監督の構想もありました。銀時を描くということは、高杉と桂の3人を描くことになります。設定上、銀時と桂は身長が同じくらいで、高杉は小柄。そして銀時は太陽の男で、高杉は月のような男で、桂は女方もできるような中性的な魅力もある男性じゃないといけない。結果、小栗旬、堂本剛、岡田将生という3人が揃いました。

桂小太郎(岡田将生)

――真選組も再現率がすごいと話題でしたよね。

やっぱり、人気のあるキャラクターですからね。銀時に次ぐ人気は土方と沖田なわけじゃないですか。キャスティングには相当苦労すると思いました。

――吉沢さんからは、「僕の沖田役はどうでしたか?」と松橋プロデューサーへの質問を預かっています。

吉沢くんの沖田はかっこよくて。ぴったりでした。もともと私は、演技で吉沢くんを選んでるんですよ。前の作品(『オオカミ少女と黒王子』)にも出てもらってまして、抜群に演技がうまいんですが、よく考えてみたらすごいハンサムガイ。業界の中では、「歩く彫刻の森美術館」と呼ばれています(笑)。まあ吉沢君であれば、こいつよりハンサムな奴はそうそういないので、彼が沖田になれば相当の人達は許してくれるだろうという思惑はありました。

土方十四郎(柳楽優弥)

沖田総悟(吉沢亮)

土方はあまりにも人気がありすぎるので、誰が演じても叩かれるんじゃないかという恐怖心があったんですが、福田さんが「柳楽さんでいきましょう」と決断しました。福田さんは『アオイホノオ』をやって、柳楽さんの面白さをよく知っている。最初はもしかしたら批判もあるかもしれないけど、できあがった姿を見れば、ファンは納得してくれるはずだという強い信頼があったんです。そしたら、この感じで土方を作りこんで来てくれたので、何も言うことはありません。真選組は素晴らしかったですよね。勘九郎さんもやりきってくれましたし、dTVドラマ版の土方十四郎(柳楽優弥)VS沖田総悟(吉沢亮)の道場対決シーンも、本当に素敵でした。

近藤勲(中村勘九郎)

福田監督は「最高の寿司職人」

――原作ファンから叩かれるんじゃないか、という恐怖はやはりあるんですか?

やっぱり、ありますね。どんな作品で誰をキャスティングしても、みんながみんなキャラクター像を持っているわけじゃないですか。そこに特定の人物を提案するわけで、どんなに受け入れられたとしても、OKだと言ってくれるのは6割くらいだと思います。でも6割に認めてもらえるものをなんとか用意して、世界観を作って、さらに多くの人に認めてもらうという作業をしなきゃいけない。

ただ不思議なもので、公開すると、今度は「この人たちじゃないとダメ」となるんですよね。『るろうに剣心』もそうでしたでしょうし、そうなってくれれば勝ちではあるんですが、そこに至るまではなかなか大変な作業だと思います。

――でも今の受け入れられ方は、実写化作品の中でもかなりすごいんじゃないかと。

丁寧に丁寧にやっています。空知先生からの温かいコメントがもちろん一番大きいんですけど、福田さんが原作世界を愛して忠実に再現しようとしていることが、お客さんにも伝わっているんでしょうね。SNS時代なので、作り手とお客さんが直接接する機会も多くなるじゃないですか。

象徴的なのが小栗さんの謝罪動画で、ああいった動画を公開するなら、本当だったら間にいろんな人が入るんだけど、福田さんと小栗さんが「アップしちゃおうぜ」と実行したんです。「怒られるかもしれないけど、ファンの人たちにはやったほうがいいんじゃないの」と実行してくれるキャスト陣の懐の広さがすごいですよね。

――ここまでお話を聞いてるとやはりキャスト陣も福田さん愛がすごいですよね。それほど愛される福田さんって何者なんでしょうか!?

大変面白い方ですね。福田さんを見て最近言っているのは「最高の寿司職人」であるということ。その人の持っている素材を大切に生かして、さらに面白くすることができる、非常に稀有な才能を持っている方なんだと思います。

――役者さんたちにも「生かしてもらってる」という意識があるからこそ、愛されているんでしょうか。

役者さんたちも、悩みながら作品をやってると思うんですが、福田さんのような人に出会いって、自分の新しい面を引き出してもらうことによって、ステップアップできるんだと思うんです。福田作品に出て、のちに売れました、という人がいっぱいいるのも、きっと魅力を再発見されているから。福田作品で、良い経験をされているんじゃないかなと思います。

「男達の銀魂道」、次回は原作者・空知英秋先生にお話を伺います。