今年も暑い夏が来る。全国のオフィスで推進されているクールビズでは、冷房の温度は28度に設定するのが一般的だが、どうやらその根拠についても疑問の声が上がっているようだ。そもそも冷房には謎が多い。「除湿」と「冷房」はどう使い分ければいいのか? つけっぱなしの方が安いという話は本当なのか? 今回は、そんな疑問をまとめて空調メーカーのダイキンに聞いてみた。

答えてくれたのは、ダイキン ソリューションプラザ「フーハ東京」で同社の最新製品や"空気"についての案内をしている高橋聡さんだ。

ダイキン ソリューションプラザ「フーハ東京」の高橋聡さん。手に持っているのは気流を可視化するための風車だ

"28度"は快適なのか?

――よろしくお願いします。早速ですが、「エアコンの設定温度は28度」というクールビズのあり方に疑問の声が上がっているようです。結局のところ、28度という温度は快適なのでしょうか?
"快適さ"は「温度」だけで決まることではないんです。今は「28度」という言葉だけが独り歩きしている状況になっているんですが、他にも「湿度」や「気流」「輻射」などさまざまな要素によって体感温度は変化しますので、総合的に考える必要があると思います。

――なるほど……。では、湿度や気流も含め、夏場で快適なのはどのような環境になるのでしょうか
一般に、快適な湿度は40%~60%と言われていますので、28度でもこの範囲の湿度であれば快適と感じる人も多いと思います。ただ日本の夏は湿気が多く、真夏は湿度80%以上になることも珍しくないですよね。室温が28度で湿度が80%以上だと、不快に感じることもあるでしょう。

ただ、暑さの感じ方は人によって異なります。同じ室温28度でも、湿度40%では涼しく、湿度60%では暑いと感じてしまう人もいるわけです。40~60%の湿度を目安として、あとは体調や健康状態と相談して工夫していただければと思っております。

――湿度はかなり重要な要素なのですね。湿度以外で工夫できる点は何があるでしょうか
気流を生み出すと快適になりますよ。うちわや扇子で顔をあおぐ時のように、外気温と同じ温度の空気でも、風が流れると涼しく感じますよね。扇風機やサーキュレーターで空気の循環を作ることが有効です。

必ずしも28度がダメというわけではなく、扇風機や除湿機などを利用することで、28度の設定温度でも快適に過ごすことはできると思いますよ。もちろん、環境によっては設定温度を下げることも選択肢の1つです。

――気流や湿度もコントロールした上で、設定温度を改めて考える必要がありそうですね