さて、iOS 11のロック画面と通知センターの統合について見てきたが、ここで1つ、iPhoneの将来的な操作方法について予想できることがあるような気がしてくる。

ロック画面と通知センターの統合は、前述の言葉を使えば「ロック画面にロックがかかっていない状態が自然」と感じるユーザーを生み出すことになる。Touch IDはiPhone 6sから高速化されており、触れるだけで瞬時にロックが解除できる。本当に1秒もかからないが、やはりロック解除という作業自体は、指を運んで行わなければならない。

ロック画面ながら、ロック解除の動作を行わずにロックを解除できれば、ロック画面での通知センターの操作と、アプリ使用中に通知センターを表示させた際の操作に齟齬がなくなると考えられる。

そこで、iPhone 8に採用されるとみられる顔認証の仕組みへの期待がかかるようになる。もしiPhoneを見るだけで顔認証が行われ、ロックが解除されるなら、Touch IDによるロック解除動作がなく、通知センターのあらゆる操作が可能になる。つまりアプリ使用中やホーム画面での通知センターの体験と共通化される。

顔認証が指紋認証と比較して、どれだけの信頼性のレベルを実現しているのか、またAppleの中で、そのレベル付けをどう評価しているのかは気になるところだ。例えば既存の顔認証では、写真や人形による登録や認証が行えてしまう事象も報告されて、現在のところ、指紋認証よりも信頼性が低い印象がある。

Appleが採用するとみられる顔認証は3Dキャプチャを可能とする赤外線センサーを組み込んだ方式になるとみられ、これまでの画像処理のみで行うものよりも精度が高まっていることが期待できる。

もし指紋認証がセキュリティ面で、顔認証より上位にあるとレベル分けをするなら、通知センターのロック解除は顔認証でも良いが、決済を行う際にはTouch IDを必ず用いる、といった措置も考えられる。

信頼性、複数の生体認証の統合や使い分けなど、iPhone体験とセキュリティに関わる点として、次のiPhoneが登場する秋まで、その動向に注目していくべきポイントと言えよう。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura