内田洋行は6月13日と14日の2日間、東京本社のユビキタス協創広場 CANVASにおいて、働き方変革を実施する企業向けのイベント「チェンジ・ワーキングフォーラム 2017」を開催した。

初日の13日には、内田洋行 執行役員 知的生産性研究所 所長 平山信彦氏が、「働き方変革とイノベーション」 と題して、150社の変革事例をもとに、コンサルタントの視点で、どのように企業が働き方変革を進めていけばよいかを解説した。

内田洋行 執行役員 知的生産性研究所 所長 平山信彦氏

知的生産性研究所は、働き方やホワイトカラーの生産性を専門に研究する社内組織。最近は、企業の働き方(Change Working)に関するコンサルティング活動を中心に行っており、これまで150件ほどの事例があるという。

平山氏は冒頭、働き方改革は「2-3-2」の3つの数字で定義できると語った。

最初の「2」は2つのハピネス(目的)で、「勝ち残れる柔軟で強靭な組織を作る」という経営者側の視点と、「働きがいを感じる組織にする」という、社員視点の目標を指すという。

平山氏は社員視点のハピネスを掲げる理由について、「働き方改革では、社員ひとりひとりが自分の事と捉え、前向きにやらないとうまくいかないし、長続きしない。社員が実感できるハピネスが必要だ」と説明した。

次の「3」は評価軸で、「創造性の向上」(賢い組織)、「効率性の向上」(手際がよい組織)、「躍動性の強化」(やる気、元気)という3つを指すという。

躍動性は同社のこだわりの部分で、活力のある元気な組織かどうかを判断するという。

そして最後の「2」はやるべきことで、行動様式、意識(メンタリティ)、組織風土といった「行動・意識の変革」と、制度・しくみ、ワークスペース、ICTといった「支援環境の整備」の2つを指すという。

同氏は、「いくら制度や環境を変えても、社員ひとりひとりの意識を変えていかないと変革は起きない。ただ、これには特効薬がない。そのため、われわれは意識改革に注力している」と語った。

働き方改革における「2-3-2」

経営視点ハピネスにおける期待効果としては、「生産性向上」「時短」「コミュニケーションの活性化」、「多様性が生まれる」などがあるが、「イノベーション起こす土壌ができる」という点がもっとも大きな柱になるという。

経営視点ハピネスにおける期待効果

平山氏は、「イノベーションは先端技術やテクノロジーに特化した話ではなく、いままでなかった価値を生み出せば、それがイノベーションだ」と述べ、製品を開発・研究する部門だけでなく、すべての部署がイノベーションを起こすことができると強調した。

また、イノベーションというと、ロボットやAI、自動運転など、いままでなかったものを新たに生み出すこと(飛躍型)を思い浮かべるが、現在の企業には、階段を昇るように逐次発展させていく「階段型イノベーション」がどんどん起きるような組織が必要とされていると指摘した。

2つのイノベーション

平山氏によれば、そういった組織を作るためには4つの視点があるという。

1つ目の視点は、「イノベーションの素になるアイデアは、異なる情報や知識の新たな組み合わせで生まれる」という点。そのため、その素材となる情報や知識を組織の中にどう蓄積し、共有していくかが重要になるという。

2つ目の視点は、「アイデアの素となる情報・知識には、言葉や数字、形で表せる『形式知』と、言語化されていない『暗黙知』があるというもの。暗黙知には、印象や感覚、味などがあるという。

3つ目の視点は、「情報や知識へのアクセスや組み合わせがアイデアの品質を左右し、その偶発性も無視できない」という点。

そして4つ目の視点は、「アイデアは多様な視点で磨かれることにより、価値を生み出すモノ・コトになり、その成果がイノベーションに結び付く」というものだ。

これら4つの視点を踏まえ平山氏は、「素材のなる情報や知識をどう組み合わせるのか、どう磨きをかけるのかによって、単なる『思いつき』になるのか、『実際に使える技術や製品』になるのかが分かれる。それには、コラボレーションがキーワードになる」と、ポイントを説明した。

平山氏は、イノベーションを起こす土壌を持つ企業風土として、次の4つの特徴があると指摘した。

・形式知へのアクセスビリティがスムーズである
・セレンディビティ(偶発性)を誘発するノイズや交流機会(雑談レベルでも)が豊富である
・アイデアを共有し磨き挙げる協創の風土がある(磨きあげることが得意な仲間がいる)
・創造への情熱、発案への称賛をもつ組織風土がある

そして最後に同氏は、「こういった風土があれば、イノベーションが必ず起きるというわけではないが、これまで多くの企業を見てきたが、イノベーションを起こす企業はこういった特徴をもっている。ただ、これらは一般論であって、これらを自分達の企業にあわせてチューニングし、具体的な日常行動にまで落とし込む必要がある。そのためには、『競争相手に比べ有利な売り方ができる』といったコンセプトが重要だ」とアドバイスした。

具体的な日常行動にまで落とし込むには、アイデアを集め、それらを集約、構造化したのち、優先順位を決めて実行していくのだという