【レポート】

実証実験で退職者を80%的中! AIで働き方改革の課題を浮き彫りにするTISの「HRアセスメントサービス」

AIは退職者の兆候を事前に見破れるのか?

今年3月、安倍首相の諮問機関である働き方改革実現会議が「働き方改革実行計画」を発表するなど、「働き方改革」は国を挙げた取り組みとなりつつある。社会の変化を見ても、労働人口減少や人材流動化、長時間労働の社会問題化など、企業にとって働き方改革の取り組みが急務であることを示していると言える。

しかしながら、多くの企業にとって、「どこから手をつけてよいかわからない」「取り組み方がわからない」「施策の効果がわからない」と、今ひとつ積極的に踏み出せないというのが現実のようだ。

そうしたなかTISは、AI(マシンラーニング)の活用によって働き方改革にまつわる課題の可視化や人事施策の立案がどのように変わるかを検証するため、「Oracle Database Cloud Service」を活用し、自社の人事関連データを用いた実証実験を実施した。

同社が分析テーマとしたのは「退職リスク予測分析」であり、分析対象となるデータには、2014年度の人事情報が用いられた。

TIS 産業事業本部エンタープライズソリューション事業部エンタープライズソリューション第3部主査を務める板井夏枝氏は、「2014年度のデータを用いて退職に影響のある属性や影響度合いを分析して、その結果となる翌2015年度のデータと照らし合わせることで、マシーンラーニングによる予測分析の効果を検証することを目指しました」と説明する。

TIS 産業事業本部エンタープライズソリューション事業部エンタープライズソリューション第3部主査 板井夏枝氏

実験では、まず過去の退職者/非退職者の人事情報から、退職に影響のある属性(変数)と影響度合いを分析。その結果を踏まえて構築したモデルを用いて、社員の将来の退職確率を個人別に予測した。

AIによる退職リスク予測分析が有効だった場合、ビジネス上の影響としては、大きく次の2点が挙げられる。

  • 退職に大きな影響を与えるイベントや社員の特徴を明らかにすることにより、退職防止施策を検討する上での方針策定に利用できるようになる。

  • 退職者を予測するモデルを構築・運用することにより、退職見込みのある社員の早期発見ができるとともに、退職確定前の事前アプローチが可能となる。

人事部の勘と経験とは異なる傾向も判明

AIが実証実験を通して行った分析結果は、その後の退職者の実に約80%を的中させるという事前の想像を超えたものだった。さらに、TISの人事部スタッフの経験から推測した視点とも異なる傾向の分析結果が見えてくるなど、その意外な内容でも彼らを驚かせた。

AIによる分析からは「ある年齢層を境に、それより下の層では異動回数の少ない人ほど退職する傾向にあるのに対し、上の層では異動回数の多い人が退職する傾向にある」ことがわかった。

この分析結果から、若手は仕事内容に変化を求める一方で、ある年齢に達すると結婚や子ども、親の介護などライフスタイルの変化か安定を求める傾向があると推測される。

板井氏は、「異動内容や期間などのデータを付加することで、より深く分析する必要があると見ています」とコメントする。

もう1つ興味深い分析結果として、ある特定の年齢層においては、通勤時間の短い人が退職する傾向があると判明したことが挙げられる。この結果から推測できるのが、そうした社員は「都心部に住んでいる」「独身である」という可能性が高いということだ。

「この結果については、家族情報やライフイベントに関するデータと照らし合わせてデータを深掘する必要があるでしょう」と板井氏。

TIS 産業事業本部エンタープライズソリューション事業部エンタープライズソリューション第3部部長、宇杉功氏は、実証実験の結果について次のように総括する。

「事前に人事部ともディスカッションを重ねて退職人材モデルの仮説を立てたりしたのですが、AIが出した示唆は、人事部の肌感覚とは異なる視点のものがありました。当社に限らず、多くの日本企業では熟練した人事部スタッフの勘と経験をベースに人事施策を進めていますが、科学的なアプローチにより意外な視点も得られるということに、AI活用の意義があると実感できました」

TIS 産業事業本部エンタープライズソリューション事業部エンタープライズソリューション第3部部長 宇杉功氏

同社では、実証実験で得られた結果を踏まえ、問題の根本にアプローチしていく構えだ。

実験結果をベースに、AIを活用したHRアセスメントサービスを提供

TISは、今回の実証実験で得られたナレッジとノウハウをベースとして、今年4月より新たな「HRアセスメントサービス」を展開している。

このサービスは、企業内の人事データをAI(「Oracle Database Cloud Service」上のマシンラーニングエンジン)で分析し、「働き方改革」を推進するための人材マネジメントに向けたロードマップ策定を行うというもの。

各企業の人事関連データを、TISのデータサイエンティストと人事コンサルタントのチームがAIを活用してデータ分析を行い、科学的な根拠から人事施策として対応すべき課題を抽出した後、最適な人材マネジメントの実現に向けた取り組みのロードマップを提言するのである。

「働き方改革」の実現に向けた課題の発見とそのための取り組みのロードマップの策定を提言する

分析テーマは、優秀人材の獲得や育成、若手社員の早期離職防止、適正配置、長時間労働の抑制など、企業ごとの課題に合わせて設定できるという。分析に必要となる人材データは、例えば優秀人材の獲得であれば、適性検査の結果や入社年、考課などが挙げられる。既に、多くの企業の人事部部門や戦略系部門からの問い合わせが来ているという。

分析テーマの例

板井氏は、「ただ課題を見つけて終わりではなく、課題に対して最新のITを活用しながらどう解決できるかまで示すというのがサービスの趣旨です。日本企業の働き方改革にAIが貢献できる可能性を示していきたいですね」と力強く語った。

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