ゲームが「子どもに悪影響を及ぼすのでは?」と心配する親も少なくないだろう。しかしゲームは昔からよくある"遊び"の一種に過ぎないとも考えられる。いまどきの子どもたちは"デジタルネイティブ"と呼ばれる世代。避けて通ることは難しく、ゲームで遊ぶようになるのは自然な流れだ。

では、われわれ親はどう対処すればよいのだろうか。ゲームとの接し方や親が気をつけるべきポイントについて、メディアと人との関わりを研究しているお茶の水女子大学文教育学部人間社会科学科の坂元章教授に聞いてみた。

宿題のごほうびにするのはアリ!? ゲームの遊び方、正しいしつけ方法は(写真はイメージ)

幼少期のしつけは、正しいネット利用にも効果的

ゲームを与える時期については、「●歳になったら」ということではなく、「時間や約束が守れるようになったら」というのを判断基準にすると良いそうだ。従って、個々の子どもにより、その時期は異なる。とはいえ周りの子どもたちがみんなゲームをしているのに、自分だけが持っていない・やらせてもらえないという状況は、子どもにとって大きなストレスとなるだろう。反動が出る恐れもあるので、周囲との兼ね合いも含めて、ゲームを与える時期を親が見極めるしかない。

また、できるだけ小さいうちにきちんとしつけることが非常に大切だ。ゲームの使い方について十分な指導を行い、適切な習慣を身に付けさせておくことはのちのち、より危険をはらんでいるインターネットの使用においても、効果的と考えられているそうだ。今の時代、ゲームやスマホを子どもから遠ざけるのは非現実的。いかに活用と安全を両立させるかを重視してきちんとしつけ、親がある程度コントロールできるかが重要になってくる。

勉強の"ごほうび"としてゲームを使うのもOK

まずは、ルールを作ることから始めたい。ゲーム時間の目安は、小学生なら1日1時間以下だそう。やる側からすれば1時間はあっという間。「もっとやらせてほしい」となりがちだが、ゲームはやればやるほどさらにやりたくなってしまうもの。欲望を抑えることを身に付けるとだんだん我慢が楽になっていくので、そのことを子どもにもきちんと伝えたい。

「おもちゃを全部片づけてから」「宿題が終わったら」などのルールも必要。約束が守れなかった場合は「翌日はゲーム禁止」など、ルールを破ったときのルール(=メタルール)も決めておくとよいそう。お手伝いや勉強などの"ごほうび"としてゲームを使うのも一つの方法。いずれにしても、ルールを習慣づけて、やがては子どもが自分でコントロールできるようになることを目指したい。

また、子ども部屋など親からは様子が分かりにくいところにゲームを置くと、ルールを守れなくなる可能性がある。ゲームはリビングなど親の目が届くところに設置するとよいそうだ。

親が内容を把握し、選択・制限を

相手を倒すようなものが多いため、暴力的なシーンはゲームにつきもの。だからこそ、ソフト選びからきちんと親が関わることも大事だ。年齢に応じて視聴・利用が適正かどうかを判断する「CERO」というレーティング機構が、ゲームソフトのパッケージ上にその内容を表示しているので、「まずはそれを目安にするとよい」とのことだ。

スマホのゲームもアプリによっては、WEBサイトでレーティングを確認できる。レーティングが表示されていないアプリの場合も、フィルタリングアプリで不適切なものをカットすることが可能だそう。いずれにせよ、ゲームのソフトやアプリの内容は、親が把握したうえで子どもに与えよう。

親子でゲームの内容について話し合うことは、ゲームからの悪影響を防ぎ、ゲームとの付き合い方を学ぶために、とても有効とのこと。実際に遊んでみないと内容が分かりにくいことも多いので、親も一緒にそのゲームを楽しんでみると良いそうだ。一緒にゲームをすることは、子どもとのコミュニケーションに役立つこともある。「暴力は良くないよね」「倒された相手の家族はきっと悲しいね」などと会話し、暴力を肯定しないことも大切だ。

ノーゲームデーでゲーム以外の楽しさも教える

ルールや制限と同じくらい大切なのが、「ゲームをしない日をつくること」と坂元教授。子どもに「ゲームをしなければ、こんなに時間があるんだ」と実感させることが一つの目的なのだそう。ただ単にその日はゲームを禁止する、というのではなく、親子で外遊びやボードゲームを楽しんだり、絵本の読み聞かせをしたりするなど、子どもがゲーム以外の世界に目を向けて興味が持てるよう、親は具体的にサポートしていきたい。

また、親自身が食事中にスマホを見ない、長時間テレビを見続けないなど、正しい行動をとらなければ、指導の説得力がなくなってしまう。子どもの模範となるような生活を心がけることも必要だ。

子どもにゲームやスマホを与えておけば親は何かと楽できる。しかし「ゲームのしつけに関しては、親がいかに自覚をもってがんばろうとするかがカギ」だと坂元教授は言う。ただ禁止したり、取り締まったりするのではなく、どう対処すれば将来的に自分自身で制御できる子になるかを念頭に、ゲームとうまく付き合っていこう。

坂元章教授 プロフィール

お茶の水女子大学文教育学部人間社会科学科教授。専門分野は社会心理学、情報教育。「メディアと人との関わり」を研究課題とし、「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」による保護者啓発の研究とりまとめにも座長として協力。日本シミュレーション&ゲーミング学会理事、特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)理事も務める。著書は『テレビゲームと子どもの心――子どもたちは狂暴化していくのか?』(メタモル出版)など多数。