おたふく風邪には専用のワクチンがある

近年、国内では成人のおたふく風邪患者が増加している。成人以降に感染すると高熱や耳下腺(じかせん)の腫れといった症状が出現するほか、男性では睾丸炎、女性では卵巣炎といった病気を併発することもある。さらに、子どもに比べて症状が重症化しやすい特徴もある。

基本的に予後がよい感染症とはいえ、油断は禁物。きちんと予防のための知識を有しておく必要がある。そこで今回は、千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの院長・篠塚規医師に大人のおたふく風邪の予防法や、感染後の対応策についてうかがった。

子を持つ親が感染したら注意

ムンプスウイルスが原因であるおたふく風邪は、国内では年間を通じて感染者が出ている。感染経路は飛沫感染でウイルスの潜伏期間は12~25日、一般的には16日から18日となっている。主に5歳から9歳の子どもにおける罹患事例が多いが、成人で感染するケースも後を絶たない。

一般的な症状として「高熱」「耳下腺の腫れ」「頭痛」などがあり、大人の患者の方が子どもの患者よりも症状が強く出る。また髄膜炎や睾丸炎、卵巣炎といった合併症を患うケースもある。

現時点でおたふく風邪への有効な治療薬はないため、万一感染してしまったら対症療法で治療を行っていく。「熱があるなら解熱剤、睾丸炎で痛みがあるなら痛み止めを処方するといった具合で、あとは睡眠をとってしっかり休むことが大切ですね」と篠塚医師は話す。

感染症の代表例であるインフルエンザや感染性胃腸炎では、症状が発現してから一定期間は登校や出社が禁止されているが、おたふく風邪はどうなのだろうか。

「学校保健安全法」は「耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで」を流行性耳下腺炎(おたふく風邪)による出席停止期間と定めている。この概念をそのまま社会人に当てはめると、症状が出現してから最低5日間は出社できないことになる。

成人間の感染に限って言えばそこまで厳密にする必要はないだろうが、子どもがおたふく風邪にかかると難聴を合併することがあり、その発生頻度は1,000人に1人におよぶとする研究報告もある。そのため、子どもを持つ親がウイルスに感染した場合は、家庭内感染を防ぐために細心の注意を払った方がよい。

6月7日追記・修正

子どもに感染するリスクについて、一部記事を追記・修正しました。