おたふく風邪の症状や特徴

おたふく風邪はムンプスウイルスが原因で感染

おたふく風邪と聞くと、「子供がなる感染症」といったイメージを抱く人も少なくないだろう。ただ、近年は幼少時に発症する感染症が成人の間で流行する事例が増えており、2016年8月に関西国際空港で、はしかの集団感染が発生したのは記憶に新しいところだ。

おたふく風邪は、インフルエンザや感染性胃腸炎のように毎年決まった時期に流行するわけではない。それだけに対策がおろそかになりがちで、その症状などを詳しく理解している人は決して多くないだろう。

そこで今回は、千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの院長・篠塚規医師に大人がかかる、おたふく風邪の症状や特徴などについてうかがった。

知らないうちにウイルスを拡散させる恐れ

おたふく風邪は、「ムンプスウイルス」が体内に入ることで発病し、年間を通じて発病リスクがある

まずは、一般的なおたふく風邪の原因や症状などについて知っておこう。

おたふく風邪は「ムンプスウイルス」と呼ばれるウイルスが体内に入ることで発病する。一般的な流行時期はなく、年間を通じて一定数の感染者が出現する。感染経路は飛沫感染で、インフルエンザウイルスよりは感染力が弱いと篠原医師は指摘する。

「ムンプウイルスの潜伏期間は12日から25日で、一般的には16日から18日と長めです。そのため、どこで感染したかを遡るのは難しいでしょう。症状が出る前からウイルスが感染者から排出されており、本人も知らないうちにウイルスをばらまきやすいタイプの感染症と言えます」

子どもの場合は5歳から9歳で感染するケースが多いとされているが、何歳で罹患してもおかしくない。実際、現在のおたふく風邪患者の半分は成人で、20~30代に多いという。この年代におたふく風邪が多い理由としては、それまで推奨されていた麻疹(はしか: measles)、おたふく風邪(流行性耳下腺炎: mumps)、風疹(rubella)の三種混合ワクチン(MMRワクチン)から、おたふく風邪対策のムンプスワクチンがもれ落ちてしまったためだ。

当時のムンプスワクチンの副作用によって無菌性髄膜炎が発生するという問題が起き、それ以降おたふく風邪ワクチンは任意接種という形になった。大人になっておたふく風邪を発症した人は、ワクチンを接種していないケースが大半と考えられる。

国内では現在、当時と異なる株でのムンプスワクチンが用いられている。国立感染症研究所によると、ムンプスワクチンを1回定期接種している国ではおたふく風邪の患者数が90%減少、2回定期接種している国では99%減少しているとする欧米のデータがあるという。