バッファローは6月2日、データ復旧事業参入に関する説明会と見学会をメディア向けに実施した。同社のデータ復旧事業参入は5月1日に発表されており、当日はサービス開始から1カ月を経過してみての手応えなども語られた。

バッファローは、ユーザーからHDDを預かってデータ復旧(リカバリー)する事業に参入。今回、預かったHDDのデータ損傷具合を確認し、比較的容易に修復できる作業をこなす部署が、メディアによる立ち入り取材に応じた

メルコグループの理念に立ち返る

冒頭、壇上にのぼったメルコホールディングスの斉木専務がおもむろに告白し始めた。

斉木専務は20年ほど前にデータストレージの事業部長を経験したが、当時はデータ復旧事業からはあえて目を背けていたという。そのときは業界が伸びていたから手が回らなかったということだが、以来ずっと参入を見送ってきた。

「20年間、顧客のニーズを置き去りにしてきたといえる。メルコグループには、4つの理念がある。千年企業、顧客志向、変化即動、一致団結だ。ストレージ事業に関して、我々には顧客志向が欠けていたとの反省から、データ復旧事業への参入を決めた」(斉木専務)

【左】メルコホールディングス 斉木邦明 専務取締役 【右】バッファロー 和田学 取締役 データストレージソリューション事業部長

データ復旧事業への参入は、理念の一つである顧客志向に立ち返ることだというわけだ。この事業で直接大きな収益を見込む予定はないとも。

「現在、当社は外付けHDDベンダーとして、国内シェアNo.1のポジションにいる。しかし、既に外付けHDDは大きな利益を生めるビジネスではなくなっており、ユーザーの支持を得ることで、HDDビジネスが少しでも大きくなれば十分。データ復旧事業の収支はとんとんで良いと考えている」(斉木専務)

データ復旧事業は経験やノウハウが重要となる分野で、社内での調査と研究だけでは事業化が難しい。そこで、技術力のあるベテラン企業のアドバンスデザインをメルコグループに迎え、5月のサービス開設にこぎ着けた。斉木専務は「HDDの『ゆりかごから墓場まで』、一気通貫のサービスを提供できる」とした。アドバンスデザインは、川崎市に本拠を置くデータ復旧事業の老舗。メルコグループに買収された後も「アドバンスデザイン」の屋号を残し、顧客とのつながりも残していく方針だ。

取り扱うすべてのストレージ製品がデータ復旧の対象

続いて、バッファローの和田学 取締役 データストレージソリューション事業部長が事業概要の説明に立った。まず、データ復旧の市場状況を理解するうえで、民生用HDDが大容量化し、HDDの買い替えサイクルが長くなったことを押さえておく必要がある。

「壊れないハードウェアは存在しない」という認識が不足していると、古いHDDをバックアップせずに使い続けてしない、HDDが故障したときに何年分ものデータを一度に失う。特に、4年目以降のHDDの正常稼働率は大きく下がるといい、ある調査では6年も経てば半分は動かなくなるという。

【左】昨今のHDDは買い替えサイクルが延びたことで、経年劣化の問題に直面するようになってきた。【右】ある調査ではHDDの正常稼働率は4年目以降、大きく下がるという