日本テレビと映像配信サービス・Huluが共同プロジェクトとして展開する音楽番組『TOKYO BEAT FLICK』の第2弾が、きょう6月2日から配信を開始した。音楽界をけん引するアーティストをゲストに迎え、オリジナルのセットリストでライブを展開する同番組。地上波ではできない、フルサイズでのパフォーマンスを視聴できるのが大きな特徴で、今回の第2弾には、今年20周年を迎えるDragon Ashが登場する。

そこで、日本テレビの川邊昭宏プロデューサーに、あらためて番組を立ち上げた経緯や今後の展望を聞いた――。

『TOKYO BEAT FLICK』第2弾に出演するDragon AshのKj

大型特番『THE MUSIC DAY』の総合演出を担当し、『バズリズム』『チカラウタ』といった番組を立ち上げるなど、日テレ音楽番組のリブランディングに取り組んできた川邊氏。昨年6月に、同局傘下のHuluも担当する部署へ異動し、すぐに動き出したプロジェクトが『TOKYO BEAT FLICK』だった。

川邊氏は「地上波の音楽番組だと、新曲が出るときにその楽曲を"テレビサイズ"と言われる3分程度にして披露してもらい、面白いトークも収録して放送するというスタイルになっています。しかし、それでは生演奏にこだわり、ライブで威力を発揮するようなアーティストの方々の魅力を、どうしても伝えきれないというジレンマが、長年音楽番組に携わっている中でありました」と振り返る。

そんな中、Huluという配信サービスをグループに持ったことで、「ライブがフルサイズで、何曲もいつでも見られ、サウンドチェック、リハーサルと、ある程度時間をかけてそのバンドの音を再現できる番組ができる」と考えて企画したそうだ。

こうして実現した第1弾は、THE YELLOW MONKEY(イエモン)を迎え、昨年10月から3カ月限定で配信。Huluとしては、新規会員の獲得などの好成績につながり、イエモン側としても、同番組に加えて『バズリズム』『THE MUSIC DAY』と連動したことで立体的にプロモーションを行うことができ、CDの売上、コンサートの動員数なども含め、「ご本人たちやレコード会社にもご好評をいただきました」と、手応えがあったそうだ。

そして、ユーザー側にも好評だった。特に、SNSをチェックすると、従来のファン層である30~40代以外にも、普段スマホでHuluのドラマやバラエティを見る10~20代ユーザーから、「初めて見たけど、イエモンってかっこいい」といった声が頻出しており、新たな層へのリーチも実感したという。

こうした若い世代は、音楽フェスに行く中心層でもあり、「配信における音楽番組は、フェスの体験に近い部分が提供できると思っています」と親和性も。「地上波のテレビだと、広い層に楽しんでもらえるのを作ることが役割になりますが、配信では、よりアンテナを張っている人たち、もっとコアに演奏や歌が聞きたいという人に、どれだけ良いものがを提供できるかになってくるので、フェスに近い感覚で作っています」と狙いを語る。イエモンにしても、Dragon Ashにしても、フェスの大トリを務める大物バンドだ。

前回の反応を見て、川邊氏は「WIN-WINの関係ができた」と分析。「6~7曲も披露するので、1曲だけでは当然できない世界観が表現できるというアーティスト側のメリットがあります。レコード会社さんも、例えばアルバムの中から複数曲を見せることで、アルバム全体の世界観をプロモーションできる。ユーザーからしてみたら、地上波のような1曲のカット割りだけでは見られない演奏スキルを、繰り返し見ることができる。だから、本当に実力のあるアーティストと、それを見たいファンにとって、非常に幸せな関係が作れたと思います」と話す。

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