タブレットとPCを混ぜないと宣言しているAppleにとっては、より積極的にその境界を曖昧化する戦略を採ったMicrosoftと、そのトレンドをフォローする企業によって、劣勢に転じるという展開となっているというのが、今の状況だ。
そうしたMicrosoft主導のPCのトレンドに対抗する術もまた、MacとiPadを別々のデバイスとして連携させて活用するスタイルの提案ということになりそうだ。
Appleは既に自社のMac向けプロアプリであるLogic Proで、iPadやiPhoneをコントローラーとして利用する方法を実現している。Touch Barよりも広い画面で、サウンド編集に用いるコントロールをタッチ操作で行えるようにしていて、マルチトラック編集の効率性を大きく高めてくれている。
iPad Proはそれ単体でも処理性能の高さやApple Pencilの活用など、十分に魅力的なタブレットに仕上がっている。しかしタブレット市場自体の魅力の低下を跳ね返すほどではない、というのが冷静な分析だ。
プロユーザーがMacと連携させて使う、あるいはiPad Pro単体でもクリエイティビティを十分に発揮できるといった自由度の高い作業環境の実現が、タッチ対応のディスプレイを備えるWindows PC一台と比較して魅力的となれば、MacとiPad Proの組み合わせでの勝負が成立するというわけだ。
MacとiPadの将来を占う上で、今回のWWDC 2017におけるiPad向けのiOSとmacOSの連携が、いかに鮮やかで効率的、そして魅力的に演出されるかに注目している。
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松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura