COMPUTEXで冷却系のパーツをずっと追いかけている筆者にとって、ここ数年、特に気になっていたのがNoctuaのアクティブノイズキャンセル(ANC)技術である。高速回転するファンから発生するノイズを抑え込むのではなく、逆位相の音を出すことで打ち消そうというのがANC技術。同社はこれを、CPUクーラーに活用しようとしているのだ。

2017年のNoctuaブース。さてどうなった……

これまでの経緯は過去記事を参照して欲しいが、原理としては、ヘッドホンで使われているANC技術と変わらない。ノイズをマイクで計測して、その逆位相の音をスピーカから出す。普通と違うのは、NoctuaのCPUクーラーの場合、ファンのブレードを振動させ、スピーカとして利用するということだ。

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2016年の「次回は多分展示する」という担当者の発言を信じ、期待しつつNoctuaブースに向かった筆者。しかし……、残念ながら今年も展示は無かった。前回と同じオチで申し訳ないのだが、お披露目は2018年に持ち越しになってしまった。

担当者に理由を聞いたところ、どうも開発が難航している模様だ。やはりブレードを振動させるというアイデアに無理があったのでは……と思わなくも無いが、現在、技術的な問題を解決すべく、開発自体は続けられているとのことだ。

ANCのアップデートが無く、落胆している筆者に対し、「これも面白いよ」と見せてくれたのが液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)を採用したという新型ファン。この素材は通常のプラスチックに比べ強度が高く、変形しにくい。そのため、ブレードとフレームの間のクリアランスを狭くでき、性能を向上することが可能だ。

LCP採用のブレード。押してもあまり変形しない

LCPの模式図。防弾チョッキなどにも使われているとか

新型ファンのクリアランスはわずか0.5mmしかないという。また、LCPを採用したことで、ブレードの振動がより早く収束する効果もあるとか。この新型ファンの発売は10月ごろを予定している。

そのほか、AMDの次世代ハイエンドCPU「Ryzen Threadripper」で採用される新型ソケット「TR4」に対応するCPUクーラーの試作品も展示されていた。ヒートシンク自体は既存モデルと同じだが、ベースとマウンタが新しくなっている。

TR4対応CPUクーラー。3モデルが展示されていた

ベースがとにかくデカい。実測で65×65mmもあった

既存モデルと比べてみた。デカすぎだろう……